6月に入り、街に人が多く出るようになりました。都内の駅や電車の中ではソーシャル・ディスタンスを保つのが物理的に難しいと痛感せざるを得ません。この間、新宿に出かけた時も“わぁ、人がたくさんいるなぁ…”と思ったけれど、そこに加担している自分もいるわけで、何とももどかしい限り。どこに行くにもマスクは必須ですが、これから梅雨に入ることもあり、涼しい日々が続くといいなぁと思ってます。ということで、今回はジメッとした時期にマッチしながら、静かに心に寄り添ってくれるようなバラードを選んでみました。
■「NO RAIN,NO RAINBOW」(’16) /BABYMETAL
1stアルバム『BABYMETAL』(14年発表)発表前からライヴで披露されていた知る人ぞ知る珠玉のバラードナンバー。満を持して2ndアルバム『METAL RESISTANCE』(16年発表)に収録され、ガッツポーズを取ったファンも大いに違いない。静謐なピアノで幕を開け、そこに乗るSU-METALの慈愛に満ちた透明度の高いヴォーカルは絶品。《絶望さえも 光りになる 止まない雨が 降り続いても》の歌詞もメッセージ性が貫かれ、多くの人の共感を呼ぶ内容になっている。実際にライヴで聴いても、ゾクッと鳥肌が立つような感動に包まれてしまう。壮大なバラードいうこともあり、頻繁にセットリストに入る楽曲ではないけれど、だからこそ生で聴いたときの感慨はひときわ大きい。
■「RIVER」(’91)/OUTRAGE
今年リリースした最新14thアルバム『Run Riot』も素晴しい出来映えだった、名古屋の秘密兵器・OUTRAGE。海外勢に負けない怒濤のスラッシュメタルでシーンに衝撃を与えた彼らだが、その長い歴史の中で最重要作に位置付けられ、OUTRAGEの名を多くの人に知らしめたのが名盤4thアルバム『THE FINAL DAY』(91年発表)。ACCEPTのステファン・カウマンをプロデューサーに迎え、ドイツでレコーディングされた本作には○○っぽさは皆無、OUTRAGEらしいオリジナリティに溢れる全9曲を収録。どの曲も凄まじいエネルギーとパッションに満ちあふれているが、そこに異色とも言えるミドルテンポのバラードを挟んで驚かせてくれた。この曲は橋本直樹の歌唱力の高さにシビれる男泣きソングだ。
■「To Be With You」(’91)/Mr. BIG
残念ながら18年にパット・トーピー(Dr)がパーキンソン病で他界したものの、ここ日本でも絶大な人気を博していたMr. BIG。彼らを一躍スターダムに押し上げたのは2ndアルバム『LEAN INTO IT』(91年発表)だろう。ブルージーなハードロックを展開していた1stアルバムを経て、本作ではキャッチーなポピュラリティーがグッと増している。「Green-Tinted Sixties Mind」はMAN WITH A MISSIONがカバーで取り上げたりと、日本のバンドマンにも大きな影響を与えている。その中でもアコギを用いたこの曲は全米1位を獲得し、普段ハードロック/ヘヴィメタルに馴染みのないリスナーをも虜にした。
■「More Than Words」(’90) /EXTREME
ファンクの要素を大胆にメタルサウンドに取り込み、EXTREMEは2ndアルバム『PORNOGRAFFITTI』(90年発表)で完全にブレイクを果たした。凄腕ギタリスト、ヌーノ・ベッテンコートの変幻自在のプレイを聴き、ギターを手に取ったキッズも多いのではないだろうか。とにかくノリの良い楽曲がずらりと並ぶ本作だが、ここでもMr.BIG同様にアコギを用いたバラード曲が全米1位へと登り詰める。バンドの非凡なソングライティング能力は高く評価され、彼らの代表作と言える一枚と言っていい。柔らかなメロディーとハーモニーの美しさを堪能してほしい。
■「Patience」(’86)/GUNS N’ ROSES
衝撃の1stアルバム『APPETITE FOR DESTRUCTION』(87年発表)でデビューを飾り、全米1位を奪取したバッドボーイズ・ロックンロール5人組。この曲は1stアルバム前に出した4曲入りEPに、アコースティックの新録を加えたミニ作『GN’R LIES』(86年発表)に収録されている。そして、この曲はシングルカットされて全米4位を記録した。アクセル・ローズの口笛で幕を開ける雰囲気のある曲調で、もの悲しいメロディーラインに胸をえぐられる。どうやらアクセルはこの時期に恋人とうまくいってなかったという噂もあり、そんな心情もこの曲に投影されているのだろうか。部屋の中でひとり、じっくりと向き合いたくなる名曲だ。
TEXT:荒金良介
荒金良介 プロフィール:99年からフリーの音楽ライターとして執筆開始。愛読していた漫画『ジョジョの奇妙な冒険』(登場人物に洋楽アーティスト名が使用されていたため)をきっかけに、いきなりレッド・ツェッペリンの音源を全作品揃える。それからハード・ロック/ヘヴィ・メタルにどっぷり浸かり、その後は洋邦問わずラウド、ミクスチャー、パンクなど、激しめの音楽を中心に仕事をしてます。趣味は偏ってますが(笑)、わりと何でも聴きます。
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