新型コロナ騒動で家で過ごす時間が増え、イライラを溜めてる人も多いと思いますが。こんな時に少しだけ気持ちをアゲてくれるのが、やはり音楽の存在。僕は最近、今回も取り上げている『サンボマスター究極トリビュート ラブ フロム ナカマ』がお気に入りで、繰り返し聴いていますが。聴いてて思い出したのが、「俺、昔からカバー曲って好きだったな」ということ。ただでさえ良い曲を他のアーティストが「原曲を超えてやる!」くらいの気持ちで、愛とリスペクトをもって挑むカバー曲という存在。中でもトリビュート盤でのカバーは本人からの依頼ということも多く、気合いの入り方が全然違うはず。今回はさまざまなトリビュート盤に収録された曲から、大好きなカバー曲を5曲セレクトしました!
■「飾りじゃないのよ 涙は」(’19) /King Gnu
19年11月リリース。井上陽水、音楽活動50年を記念して制作された『井上陽水トリビュート』収録。槇原敬之、椎名林檎、宇多田ヒカル、福山雅治など、陽水をリスペクトする大御所アーティストが集う豪華盤の中でも、強烈な存在感を放つKingGnu。「2012年の『フジロックフェスティバル』で偶然、井上陽水のステージを観てからハマってしまった」と、公式ページで語っている彼らが選んだ曲は84年、中森明菜に提供して大ヒット曲となった「飾りじゃないのよ涙は」。いい意味で原曲のイメージにとらわれず、大胆不敵にアレンジしたKingGnu節全開のカバーがめちゃくちゃカッコ良い! サビのハイトーンも原曲に負けない気持ち良さ。楽曲の良さが世代を超えて伝わることも証明した一曲です。
■「あの鐘を鳴らすのはあなた」(’18)/MAN WITH A MISSION
18年9月リリース。和田アキ子、デビュー50周年を記念して制作された『アッコがおまかせ~和田アキ子 50周年記念 トリビュート・アルバム~』収録。竹原ピストル、横山 健、EXILE SHOKICHI×PKCZ®、C&Kなど、世代やジャンルを超えた人選も面白いこのアルバム。MAN WITH A MISSIONが選んだ曲は72年発売、和田の代表曲と言える「あの鐘を鳴らすのはあなた」。原曲の良さを噛み締めながら歌う、リスペクトにあふれた彼らのカバー。たっぷり溜めて溜めて、希望の光を撃ち放つ開放感と多幸感のあるラストは美しく痛快。過去に桑田佳祐、クレイジーケンバンド、サンボマスター、徳永英明らもカバーしているこの曲。いろんなアーティストのバージョンを聴き比べるのも面白い。
■「深夜高速」(’09)/泉谷しげる
09年9月リリース。フラワーカンパニーズ20周年を記念して、彼らの代表曲である「深夜高速」のみを、セルフカバー含む14アーティストがカバーした『深夜高速 ~生きててよかったの集い~』収録。斉藤和義、金子マリ、怒髪天など錚々たるアーティストたちが、《生きててよかった》と心の叫びを歌うこのアルバム。人間味あふれた歌声に「同じ曲でも歌い手によって、こんなに印象が違うんだ!」と驚かされ、コンピレーションの面白さや醍醐味を堪能させてくれる1枚だが。フラカンの演奏に乗せて、《青春ごっこを今も続けながら旅の途中》と歌い出す泉谷しげるの説得力たるや、ハンパない! 考えてみると「春夏秋冬」の《今日ですべてがむくわれる》と、「深夜高速」の《生きててよかった そんな夜を探してる》は、限りなく近いことを歌ってるような気もする。
■「Glorious」(’19)/HEY-SMITH
19年3月リリース。東京スカパラダイスオーケストラのデビュー30周年を記念して制作された、トリビュート集『楽園十三景』収録。04 Limited Sazabys、10-FEET、ACIDMAN、BiSH、キュウソネコカミなど、フェス等で活躍する後輩アーティストが名を連ねたこのアルバム。最強ホーンズを要する、日本を代表するスカバンドと言えるスカパラのカバーはセンスも演奏力も試される上、ホーンパートをどうアレンジするかなど、課題も多かったろうが。バンドアレンジで自分たちの音に変換したり、歌に特化したアレンジにしたり、あえてインストに挑戦したりと、それぞれが愛とアイデアを持って挑んだ楽曲はどれも聴き応え満点。中でもホーン隊を要するHEY-SMITHの「Glorious」はテンポアップしたスカパンクアレンジがあまりにハマりすぎてて、性急なビートに乗せた痛快なヴォーカル、高らかに鳴らすホーンサウンドに「HEY-SMITHの曲では?」と勘違いするほど。スカパラのイズムが、後続バンドにしっかり継承されていることも伝わってくる一枚です。
■「ロックンロール イズ ノットデッド」(’20)/SUPER BEAVER
20年3月リリース。サンボマスター結成20周年を記念して制作された、『サンボマスター究極トリビュート ラブ フロム ナカマ』収録曲。ヤバイTシャツ屋さん、MONGOL800、Fear, and Loathing in Las Vegas、銀杏BOYZ みねたかずのVなど、同じ時代を生きるナカマたちが大集結したこのアルバム。今回、この作品が紹介したくてこのテーマで原稿を書き始めたくらい、全12曲どれもが素晴らしい大傑作! サンボや楽曲への愛と想いを惜しみなく注ぎ込んだ激アツカバーから、自身の解釈で大胆なアレンジを施した楽曲など、どの曲を選んでも良かったのだが。歌詞や曲に自身の気持ちをしっかり重ね、最高に熱いロックンロールで1曲目を飾ってくれているSUPER BEAVERの「ロックンロール イズ ノットデッド」をセレクト。この曲を含めた今作を聴いて、サンボの楽曲は山口の歌やギター、リズム隊の独特のグルーブあってこそだと思っていたけど、本質的なところでの楽曲の良さに改めて気付かされた。初期楽曲も多いので、知らない人は原曲と併せて聴くべし!
TEXT:フジジュン(おばけえんとつ)
フジジュン プロフィール:1975年、長野県生まれ。『イカ天』の影響でロックに目覚めて、雑誌『宝島』を教科書に育った、ロックとお笑い好きのおもしろライター。オリコン株式会社や『インディーズマガジン』を経て、00年よりライター、編集者、デザイナー、ラジオDJ、漫画原作者として活動。12年に(株)FUJIJUN WORKSを立ち上げ、バカ社長(クレイジーSKB公認)に就任。メジャー、インディーズ問わず、邦楽ロックが得意分野だが、EBiDANなど若い男の子も大好き。笑いやバカの要素を含むバンドは大好物。
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