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首振りDolls、新アートワークで今までとは違う一面を提示

ガレージロックなのか? ロックン・ロールなのか? ハードロックなのか? パンクなのか? はたまた、ブルースなのか? 歌謡ロックなのか?

北九州が生んだ異端児が放つサウンドは、何処にも属さぬ毒を孕み、いつの間にか聴く者を抜け出せない蟻地獄へと引きずり込む。胸を打つポップなメロディーと、妖しげなファンキーさと、剥き出しの情念を乗せたオドロオドロしさこそが首振りDolls。中性的なセクシャリティとド派手でグラマラスなルックス。70年代前半のロックシーンを彩った華やかなムーヴメントは今、彼らによって呼び起こされる。首振りDollsの新アートワークに迫ってみた。

■首振りDollsに合った変化を 提示していけてるんじゃないかな

――新たなアートワークが解禁になったね。

ナオ:そう。この度イメージを一新致しました! ワタクシ、なんと、着物を脱ぎました! 新しい首振りDollsなんだけど、二度と着物を着ないとかではないし、過去を否定しているという訳でもないし、音楽性が変わってしまったとか、今までの首振りDollsらしさが無くなってしまったとかってことではなく。実は、音楽的に首振りDollsが根底に持っていた部分の一部でもあって、今までとは違う一面が表に出たって感じなので、これも首振りDollsの個性として、今後の動きに注目してもらえたらって感じです。

ジョニー:以上! ありがとうございました! 終了!

ショーン:あははは。綺麗にまとまったね(笑)。

――………………あぁ、、、インタビュー終了しちゃったよ。

ナオ:あれ? インタビュー終わらせちゃった?(笑) ごめんなさい(笑)。いやいや、でも、本当にそうなの。全く新境地って訳ではないというか。

――そうね。たしかに、首振りDollsは、このアートワークから窺い知れるようなグラム・ロック感はもともと持ってるバンドだったもんね。ジョニーのルーツに一番近いのかな?

ジョニー:そう。グラムロックって、ずっとやりたかったことだったから。

ナオ:言ってたよね、昔から。首振りDollsを結成した当初、ジョニーから“ナオちゃんがホモっぽかったら面白いから、ホモ役やれ!”って言われたもん(笑)。

ジョニー:ホモというのは差別的な意味じゃなく、グラムロッカーってそういう印象が強いというか。女性的で華やかでグラマラスという部分でね。

ナオ:たしかにね。

――美を追求するあまり、思いっきり華やかで艶やかだからね。

ナオ:すごく魅惑的。男がお化粧をするって、本当にすごく魅惑的だと思う。きっとジョニーはデヴィッド・ボウイとかのことを言ってたのかな? って思うんだけどね。当時の自分はハードコアとかガレージロックばっか聴いてたから、そこまでグラムロックに詳しくなくて。だから、ジョニーのその言葉を聞いて、“ジョニーは突然何を言ってるんやろか???”って思ったけどね(笑)。“俺、ホモ???”みたいな(笑)。

※デヴィッド・ボウイ、グラムロック=ホモという表現ではありません。

――ショーンのルーツにグラムロックは?

ショーン:自分は、何を持ってグラムロックと括るのかがイマイチ解ってないんですけど、昔、“カマカマカマカマ〜♪”は聴いてました。これ、なんでしたっけ? あ、カルチャー・クラブ!

――カルチャー・クラブね!

ジョニー:お〜! まさにボーイ・ジョージは一つのシンボルだよね! そこをグラムロックと言うのかニュー・ウェイヴと言うのかは、俺たち下々には断言出来ないから、そこは専門家の偉い人たちに委ねるとして、俺がロックに求めるものは、そういう煌びやかさであるのはたしかだから、そこもたしかに繋がってはいる。

ナオ:もともと今回のヴィジュアルみたいなスタイルだったもんね、ジョニー。

ジョニー:そうそう。昔、シルクハットも買ったことあったし。昔買ったシルクハットは赤だったかな。

ナオ:俺が初めて会ったときのジョニーは赤のジャンプスーツだったもんね!

ショーン:赤のジャンプスーツ!?

ジョニー:さすがにジャンプスーツではなかったよ(笑)。

ナオ:ホント!? 全身赤だったよ! 「悪魔と踊れ」を初期に出した頃。

ジョニー:あぁ〜、ジャンプスーツではなかったけど、全身赤だったときあったね! あの服どこいったんやろ? たぶん、引っ越ししたときに捨てちゃったかな(笑)。

――そんな情報いらないわぁ〜。

一同:(爆笑)

ジョニー:赤のライダースも持っとったなぁ〜。それはカビが生えて捨てた(笑)。

ナオ:赤いライダース! 俺も持ってた!

ショーン:へぇ〜!

――グラムロック自体も音楽性を意味するものではなく、表現方法であった訳で。

ナオ:そうね。音楽ジャンルを示すものではないからね。

ーー首振りDollsは、印象として、ドラムボーカルのナオが着物を着ているから、そのイメージがやはり強いこともあって、そことグラムロックとが直結するという感じではなかったけど。

ナオ:そうね。たしかに、私が作ってきた「鏡地獄」的な昭和歌謡感の強い演歌ロックみたいな昔の首振りDollsの曲達からはグラムロックの匂いはしないもんね。今回シングルカット的な魅せ方をする『首振人形症候群〜REVISITED盤〜』に収録されている「リトルサマーベリーオレンジミルク」は、完全にグラムロックを意識したサウンド感だし、そういう魅せ方なんだけど、そこも最初に言ったみたいに、これまでの首振りDollsになかった色ではなくて、昔からあった一部分ではあったのね。けど、結成当初は私の作る曲が割合的に多かったから、着物というスタイルがしっくりきてたのもあったと思うし。でも、ショーンが加入してから、より音楽性の幅が広がったことで、いままでのドロドロとした印象のヴィジュアルに違和感が出てきたのかなって思ったりはするけどね。けど、バンドも日々成長しているし、変化も進化もしているから、その都度、今の首振りDollsに合った変化を、サウンド面でもヴィジュアル面でも提示していけてるんじゃないかな?って思ってるかな。

――首振りDollsは、対バンを決めるのが本当に難しいバンドで、ハードロックだったり、ファンクだったり、昭和歌謡だったりと、何処にも属さない幅広い音楽性を個性とするバンドであるから、一つのヴィジュアルで音楽性を表すのが難しいのかもね。

ナオ:そうなのよね〜。『首振人形症候群〜REVISITED盤〜』には、「鏡地獄」みたいな昭和歌謡感の強い曲も、完全にグラムロックを意識したサウンド感を押し出した「リトルサマーベリーオレンジミルク」も一緒に入っちゃってるんだからね〜。つくずく首振りDollsって、変なバンドよねぇ〜(笑)。

ジョニー:でも、逆に何処にでもいける感じもするけどね(笑)。

ショーン:たしかに。偏ることなくね。

ナオ:そうなの。だからね、ヴィジュアル的には、そこまで着物にこだわることはないのかな? って思ったりしてはいたというか。でも、ずっと着物着てきたし、やっぱり昔の曲をやるときは着物が似合ったりもするし、この先着物を着ませんってことではないし、そこは首振りDollsを表現する上でも必要不可欠な部分だと思っているので、着物を捨てたりはしないから、これまでの首振りDollsの世界観を好きで居てくれた人たちは安心してほしいけどね。

――ナオから出てくる情念を孕んだドロドロとした演歌ロックも、今作っている新曲の中にもあったりするからね。

ナオ:そうよ〜。そこは無くならないから安心して欲しいわ!

――着物はナオのルーツでもあるサンハウスの柴山俊之さんからの影響が大きいんでしょ?

ナオ:そうそう。

ショーン:でも、自分が前のバンドで首振りDollsと対バンしていたときは、着物じゃなかったよね。

ジョニー:たしかに。最初は着物着てなかったよね。俺の私服をみんなで衣装にして着てた時期もあったからね(笑)。当時はみんなで古着屋に行って探したりしてたもんね。

ナオ:してたしてた!

ショーン:そういえば、ナオくん、花柄のパンツに柄シャツとか合わせてた! なんか、シュッとしてて、頭だけ大きかったイメージ。この木なんの木、気になる木〜♪みたいなシルエットで(笑)。

ナオ:あははは。そうそう! 柄シャツ着てベルボトムとか履いてたもん! 今と変わらず髪には逆毛いれてね! ってことは、今回の新ヴィジュアルはある意味原点回帰ってことなんかな!?

ジョニー:たしかに、そうなるね。全く無かったところへ飛び込んだって訳ではない。

■アートワークと音楽性の関係って、 すごく大事

――となると、衣装として着物を着始めたのは何がきっかけだったの?

ナオ:そう言われるとなんでやったんやろ?(笑) 当時、衣装についてジョイフルでめちゃくちゃ話し合ったことあったやん! あんときからかな?

ショーン:あははは。九州で話し合うとしたらジョイフルだよね!

ジョニー:東京の人ってジョイフル分かるのかな?(笑) 九州では有名なファミレスなんだけど(笑)。

ナオ:当時ジョイフルの喫煙席の一番隅っこの席で衣装会議したのめちゃくちゃ覚えとる〜。

ジョニー:マンガ倉庫(古着屋)に衣装探しに行ったね。東京にもマンガ倉庫みたいなとこあるの?

ショーン:ありますよ! みんなで一緒に衣装選びに行きたいですね!

ジョニー:行こう! 今回の衣装もツアー先の大阪でみんなで古着屋に探しに行ったりしたけど、あれ結構楽しかったしね。

ショーン:楽しかった!

ナオ:やろうやろう! でも、何きっかけだったんかなぁ? 着物着だしたの。なんでやっけ? ジョイフルで話し合ったとき、ジョニー、たしかニューヨーク・ドールズの写真持って来てたよね?

ジョニー:持ってったね〜。あんなバンドになりたかったから。

ナオ:たぶんニューヨーク・ドールズだったと思うんだけど、メンバーが着物を羽織ってる写真があって。あ〜、外国のロックンローラーが着物着るとカッコイイなぁ〜。って思いながら見とったときに、あ! 柴山さん! って、そこが繋がって。そこからかなぁ? そっから着物着ちゃおうかなぁ〜って。違ったっけ?

ジョニー:どやろ? 最初にナオちゃんが着物着たのって、首振りDollsのワンマンのときよね。

ナオ:あ〜〜〜! そうだ! 思い出した! そうや! 

ジョニー:小倉WOWや!

ナオ:そうそうそう! 小倉WOWのワンマンのとき、いろいろと演出を考えてて、そこで着物着ちゃおう! って話になったんや! 昔、「菊の変」っていう演目があって、私がドラムから離れて曲中に菊を食べる演出があったんですよ! そのときに着物を着たくて。

ジョニー:あ〜。思い出した(笑)。ワンマンだからなんかしようって、開場してから1時間くらい映像流したり、壁に銀紙貼り付けたり、ナオちゃんが着物着たり、ナオちゃんが着替えてるときずっとインストやったりしたんだよね(笑)。めちゃめちゃ間延びして、ライヴハウスの社長に叱られたもんなぁ〜(笑)。

ナオ:そうそうそう(笑)。ただ、出てきた俺が着物になってました〜! っていうだけの為に費やした時間っていう(笑)。

ジョニー:引っ張りに引っ張って、それだけ!? みたいな(笑)。爆発するくらいのデカイ特効が無いと元取れない感じだったよね、あの待ち時間は(笑)。お客さんももちろん、待ってる俺たちもめちゃくちゃ長い時間だったからね(笑)。

ショーン:たしかに(笑)。待たされる側はめちゃくちゃ長く感じただろうね。

ナオ:たしかに(笑)。当時試行錯誤しながらいろいろやったのよ! 最初の着物は、ライヴの中で衣装替えしてみんなを驚かせよう!っていう演出だったの(笑)。

ジョニー:だだ滑りしたけどね(笑)。

ナオ:そうね〜(笑)。

ショーン:くふっ(笑)。銀紙はなんで貼ったの?

ナオ:反射して照明が綺麗に見えるかな? と思って貼ったの。

ジョニー:全然綺麗にならなかったけどね(笑)。

――いろいろと試行錯誤してきたんだね。

ナオ:そうね〜、歴史だね(笑)。当時、本当にいろんなことしてきたなぁ。よくライヴハウスの人たちが許してくれたなぁって思うこととかも、全部やらせてもらってたから。その試みの一つの中に着物があったって感じだった。そのライヴは着付けに時間がかかったから賛否あったんだけど、着物でドラム叩きながら歌ってるっていうのが話題にもなって、ロックと着物の融合ってカッコイイのかもなって思うようになって、そこから着物を衣装とし始めたって感じ。

――ショーンは、着物を衣装とする前の首振りDollsにも魅力を感じていたし、着物を衣装としてからの首振りDollsにも魅力を感じていた訳だもんね。アートワークと音楽性の関係というものをどう考えている?

ショーン:自分は、アートワークと音楽性の関係って、すごく大事だと思うんです。見たままとか、当たり前とかが勿論正解だと思います。だけど裏切られたときのそこの違和感にも化学反応が起きる気もするんです。だから、ロックをやりながら着物を衣装とする前の首振りDollsもすごく好きでしたね。ナオくんが着物を着始めた頃も、昔のバンドでよく対バンしてたし。音楽性が大きく変化したのかっていったらそうでもなかったし。だから、ナオくんが着物を着ている首振りDollsもすごく好きなんです。やっぱり着物の衣装で魅せるのは、ナオくんの作った曲が一番ハマると思うんですけど、自分の作る曲を着物を衣装とする首振りDollsがやっても、その違和感がカッコイイと思うというか。そここそも首振りDollsの個性なのかなって思うんです。

ナオ:うんうん。そうだね。やっぱりどうしても何事においても“見た目”って重要で、だいたいの人は最初見た目で判断するでしょ。それって当たり前のことだと思うんですよ。

――とっかかりの判断材料としては、そこしかない訳だからね。

ナオ:そうそう。きっと、知ってくれたら、こんなにも奥が広かったんだ! って思ってくれると思うけど、間口が狭いと、奥まで知ってもらえる前に入って来てもらえないと思うから、ちょっと広げてみてもいいのかなっていうのも、正直なところかな。怖がらないで、入ってみて! 案外ポップなの! みたいな(笑)。「リトルサマーオレンジミルク」もすっごいポップだからね!

――今回、衣装もアートワークも「リトルサマーオレンジミルク」のグラムロック感に合わせた世界観だからね。

ナオ:そう。ゴリゴリにそっちで攻めてみました!

ジョニー:いつの時代のバンド??? っていうくらい振り切ってる(笑)。

ショーン: 今回、自分の衣装だけグラムロックというよりパンクなんですけどね(笑)。

ジョニー:時代的に同じだから大丈夫! イギリスかニューヨークかの違いというか。それに、3人揃ったらすごくしっくりきたし、このごちゃごちゃ感も首振りDollsの個性なのかなって思ったし。

ナオ:セックス・ピストルズとかニューヨーク・ドールズの仕掛け人だったマルコム・マクラーレンへのオマージュ的な感じかな。

ジョニー:マルコムがニューヨーク・ドールズを見て、セックス・ピストルズにさせたから、ニューヨーク・ドールズは自発的にあのファッションセンスを持ってたってことなんだよ。だから、ニューヨーク・ドールズはすごいんだと思う!

ナオ:そうなの? おいおい、すごいな、ニューヨーク・ドールズ!

――ニューヨーク・ドールズも、バンドとしての集合体で見ると、あの毒々しさがたまらなくカッコイイんだけど、単体のファッションセンスとして見てみると、かなり奇抜というか、なかなか普段あの格好で歩いてないよね、的な感じだもんね(笑)。

ジョニー:そう(笑)。ただの変態というか(笑)、派手な人だもんね(笑)。今回の俺たちもそう(笑)。でも、ニューヨーク・ドールズは、あれを最初にやったセンスはすごいと思う!

――ジョニーはアートワークと音楽性の関係というものをどう考えている?

ジョニー:すごく重要なところだとは思うけどね。曲に関してはそれぞれの個性が違うから、好きなことやったらいいと思うし、なんか不思議と、衣装の話と繋がるとこなのかもしれないけど、首振りDollsも、3人が作る曲はそれぞれ全く違うけど、3人で演ったら首振りDollsになる感じなんだよね。ニューヨーク・ドールズの衣装も同じで、単体だとただただ派手なだけだけど、バンドとしての集合体になったら、それがすごくカッコ良く見えるし、それこそがニューヨーク・ドールズになるのがすごいと思うからね。そうなれたらいいなと思う。

――そうだね。対バンの在り方もそうあるべきなのかなとも思うというか。対バンする相手を選ばない首振りDollsならではの、対バンだからの魅せ方を追求していってもいいんじゃないかなと。

ナオ:セットリストは対バン相手によって意識的に変えていたりはするけど、もっと極端に演る曲も偏らせて、もっと派手に見た目からも変えていくってことね。そこまで振り切れるバンドでもあると思うからやってみるのもありかも。ライヴごとに“その日しか見れない首振りDollsを魅せていく”ってことでしょ?

――そうそう。

ナオ:そうしたら“対バンでの首振りDolls”も見たくなるもんね。

ジョニー:それ面白そうだね。

ショーン:首振りDollsは、3人が曲作るから、振り幅的には不可能じゃないですよね。4月17日PLASTICZOOMSとの対バン(下北沢SHELTER:OPEN 19:00 / START 19:30)はどんな首振りDollsで挑みます? PLASTICZOOMS、クールでシュッとしててスタイリッシュでカッコイイから、そこと闘うとしたら、、、俺たち裸で闘うしかないですかね(笑)。

ジョニー:裸体!? 

ナオ:裸体!?

ジョニー:レッチリみたいにムキムキやったらイイけど、残念ながらねぇ…………(笑)。

ナオ:あははは。じゃあ、ちょっとPLASTICZOOMSに寄せてみました! っていうので、裸にめちゃくちゃお洒落な帽子かぶってみる?

ジョニー:裸にネクタイとサスペンダーとか!

ナオ:ブリーフにサスペンダーいいかも!

ショーン:あ〜。ある意味カッコイイかも。

ナオ:ブリペンダー!

ショーン:ブリペンダー!(笑)

ジョニー:あははは。まぁ、ある意味アンガス・ヤング的な!

ナオ:ある意味ね(笑)。でも、こうして改めて首振りDollsというバンドを振り返ってみると、本当に振り幅広いなって思う。初期に中心としてやっていたのは、アングラ真っ盛りな私の曲だったけど、その頃から、今もライヴでは定番曲となってる、ジョニーが作ってきたかなりポップなロックンロールナンバーの「タイムマシーン」はやってたからね。

ジョニー:やってたね。ていうか、「リトルサマーベリーオレンジミルク」も当時からあったからね。

――え!? そうなの?

ジョニー:そうそう。原曲はその頃からあって。でも、当時、途中からのいい展開がどうしても思い付かなくて、結局完成させずにそのまま置き去りになってて。一回やろうとしたんだけど、そのときも結局そのままになっちゃって。首振りDollsの最初のアルバム『首振人形症候群』を、去年『首振人形症候群-REVISITED-』(2019.12.16発売)として、現メンバーで書き下ろした新曲を入れて再発することになったときに、入れてみようと思って完成させたって感じ。

――やはり元々ジョニーの中にあるルーツなんだね。

ジョニー:そうだね。それに、“リトルサマーベリーオレンジミルク”っていう単語は本当に、もっと昔から頭の中にあったからね。結果、今、こういう形で出せるのは、本当に時期的にもベストだったのかなって思う。

――そうだね。シングルカットっていうのも、最近はあまりないけど、この曲を映像で見て、聴いて、興味を持ってくれて、聴きたいと思って『首振人形症候群-REVISITED-』を手に取ってくれたら、一気に首振りDollsの全てを網羅してもらえる状態にあるのも素敵かなと。

ナオ:そうね。『首振人形症候群-REVISITED-』には、初期曲から現在の首振りDollsの全部が詰め込まれているからね。これ聴いてくれて、『真夜中の徘徊者〜ミッドナイトランブラー〜』と『アリス』にも興味持ってもらえたら嬉しいな。

■3人3様だからこそ 首振りDollsは面白いんだと思う

――そうね。ショーン的に「リトルサマーベリーオレンジミルク」を最初に聴いた印象は?

ショーン:最初に「リトルサマーベリーオレンジミルク」を聴いたとき、すごくいい曲だなって思ったんですよね。始まりはすごくポップなんだけど、サビが泣きメロだし。本当に切ない感じがあるんですよ。本当にめちゃくちゃいい曲だなって思います。

ジョニー:ありがとう! サビはスタジオで作ったんだよね。

ナオ:そう。サビの歌詞はみんなで考えた。

ショーン:リハスタの休憩時間にタバコ吸いながら。

ナオ:そうそう。ジョニーにイメージ聞いて、みんなで合う言葉を出し合って。

ジョニー:全体の歌詞の骨組みと1番は出来てたんだけど、2番を悩んでいたら、みんなで考えてくれて。

ショーン:楽曲に関しては、最初聴いたとき、ジョニーさんにしてはめちゃくちゃポップだなって感じたというか。ちょっと意外だなって思ったとこもあったんですよね。

ナオ:ジョニーはめちゃくちゃポップ野郎だよ(笑)。

ジョニー:うん。基本ポップ(笑)。

ショーン:ポップなんだけど、「悪魔と踊れ」とかの男臭さとかワイルドさもジョニーさんだと思うから。「リトルサマーベリーオレンジミルク」にはそういうとこがないなと。

ナオ&ジョニー:あ〜、なるほどねぇ〜。

ショーン:こういう煌びやかさって、珍しいなって。

ナオ&ジョニー:あ〜、たしかに〜。

ショーン:「リトルサマーベリーオレンジミルク」には男臭さがないから。

ジョニー:たしかに、「リトルサマーベリーオレンジミルク」は男臭さがないかもしれん! 

――そうだね。ジョニーの作る曲は“男の哀愁”だったり“童貞の男の子”だからね。

ナオ:そうそう。“男の子”だからね。

――そう言われてみたらそこもそれぞれ違うよね。ジョニーは基本“俺”という男目線だし、ショーンは“僕”だけど、あまり一人称を感じさせないし、ナオは女性目線の情念を感じさせたり、文学的な要素をそこに感じるから。

ジョニー:うん。俺は自分が男だから、女子供の気持ちは分からないから、そこを歌詞にしようなんて思ったことないし。女の人の気持ちなんて一度も理解しようと思ったことないし。ましてやそれを曲にしようなんて思ったことないからね。

――ジョニーは普段から思いやりのある人だし、ちゃんと相手の立場や気持ちを考えて行動する人だから、非情ということではなく、そこは別モノということだよね。そういう考えがあるんだっていうことは理解するけど、そこを消化しようとは思わないというか。でも、ナオは元々女性っぽい思考があるというか。すごく理解しようと努力するし、どうしてそういう考えに至るのかも知りたくて、解るまで追求する傾向があるというか。哲学的だし、相手の気持ちを100%理解しようとする優しい性格の、ナオ故の個性でもあると思うんだけど。

ナオ:そうかも。私は女目線の歌詞が多かったりするからね。女っぽいのかもなぁ。

ジョニー:俺には絶対に書けない歌詞書くからね、ナオちゃんは。逆にすごいなって思う。自分が男なのに、女の気持ちになって歌詞が書けるなんて、すごいなって。

ナオ:俺は歌詞にするとき、女性目線の方が書きやすいんだよね。自分では必要以上に理解しようとしてる訳でもないんだけど、無意識に考えてるのかもね。考えてるっていうか、やっぱり女っぽいんじゃないかな。それに、歌詞を書いてるときは、逆にそこまで深く考えていなかったする。登場人物になりきって書いてるから。

――登場人物の女性になりきれるという時点で、理解しているんだと思うからね。

ナオ:そうだね。

ジョニー:俺も、歌詞を書くときは登場人物になりきって書いてるんだけど、そこが女性目線になることは絶対にないからね。そこは大きな違いだよね。

――歌詞を書く上で一番考えていることは?

ジョニー:“こうだから、こうなんだよ”って決め付けるような歌詞は絶対に書きたくないなって思ってる。無理に背中は押したくないというか。背中を押すにしても、フワッとね。後は自分で考えな、的なところまでに止めたいかなと(笑)。

ナオ:ジョニーはそうだね〜(笑)。

――ショーンはどう?

ショーン:「RAD」は“僕”だったけど、あんまり一人称は出したくないかな。概念で書きたいというか。いつか自然の摂理を歌詞にしたいんです。

ジョニー:なになになに!? 自然の摂理ってなに!? スイヘイリーベーボクノフネ! みたいなこと!?

ショーン:あははは。そうじゃなくて、息吹が芽生えて、、、みたいな感じの。

ナオ:息吹が芽生えて、、、? 哲学的な感じ? へぇ。面白そう。俺は人の歌しか書けないからなぁ。人の気持ちしか歌に出来ない。なんか本当に3人3様だよね。

――そうね。それぞれ違う性格と感性だからね。また特に3人は本当に異なっているし(笑)。

ナオ:うん。だからこそ首振りDollsは面白いんだと思う。ショーンが言うそういう歌詞が乗るサウンドはどうなるんやろ? エンヤみたいな感じってこと? 

ショーン:あぁ、エンヤね。良いよね。

ナオ:なるほどね〜。

■新しいながらも、 首振りDollsの原点

――振り幅は無限だね。ところで、公開された「リトルサマーベリーオレンジミルク」のMVは、全編クロマキー撮影だった訳だけど、撮影秘話的なところを聞いてもいい?

ナオ:初のクロマキー撮影でしたね。そこは首振りDollsにとってはすごく大きなチャレンジだったし、衣装を着物以外でここまでバッチリ揃えて撮ったことがあまりなかったから、鏡に映った自分を見たとき、めちゃくちゃ楽しかったし、嬉しかったですね。ウホォ〜! グラムロッカーや! ってテンション上がったというか(笑)。

――あははは。ウヒョウヒョ言ってたもんね(笑)。

ナオ:スゲェ楽しかった!

――参考動画見たりね(笑)。

ナオ:あ、そうそう! ハノイ・ロックスの映像見て、マイケル・モンローの動きを参考にしてみたり(笑)。ZIGGYのMVとかも見てみたり。表情に至っては、戸城さん(戸城憲夫)をめちゃくちゃ意識しましたからね!(笑) でも、基本グラムロックバンドのボーカリストって、オシッコ我慢してるみたいなポーズが多いなって思った。そこがまたどうしようもなくカッコイイんだけどね!

――あははは。解る解る。ジョニーはどう?

ジョニー:憧れのロンドンブーツが履けたのが嬉しかったなぁ。ちょっとあのヒールの高さでライヴをするのはちょっと怖いけどね(笑)。

ナオ:ジョニーね、厚底でライヴするとめちゃくちゃギター上手いの!

――どうして?

ジョニー:動かないから間違わない(笑)。

ショーン:あはははは!(爆笑)

ジョニー:演奏に集中するからね(笑)。

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――そういうことね(笑)。ショーンは?

ナオ:可愛かった! めちゃくちゃ可愛かった! 撮影クルーがみんなショーンの撮影のとき、声を揃えて“可愛い可愛い〜!”って言ってたのがメイクルームまで聞こえてきたから、我慢出来なくてスタジオまで見に行ったんだけど、本当に可愛くて! もぉね、本当に可愛くて!

ショーン:いつもと同じ動きだったのに、何が違ったんだろな?

ナオ:分からんけど、とにかく可愛かった! クロマキーだったから、可愛さが引き立ってたのかもね! スッゲェ〜可愛かった!

ショーン:あ、、、、ありがとう(笑)。でも、衣装がすごく可愛くてずっとテンション上がってたんで、それでかなぁ(笑)。ボンテージのセットアップは憧れでもあったから、着れて嬉しかったんですよね〜。ヴィヴィアン・ウエストウッドの初期の『SEX』から『セディショナリーズ』の頃が好きなので。

ナオ:初期もカッコイイもんね〜。新しいながらも、首振りDollsの原点でもある今回のアートワークと「リトルサマーベリーオレンジミルク」を是非、楽しんでもらえたらと思います! ここのところイベント等の自粛要請があったりして首振りDollsとしても何本かライヴを中止せざるを得ない状況にあり、楽しみにしてくれていたみんなを悲しませてしまったりもしたので、この曲と新たなアートワークが、みんなを少しでも元気にしてくれたらと思っています。

――そうね。約1カ月ライヴが止まってしまっているからね。

ジョニー:3月1本もライヴしてないからね。こんなにライヴしていないのは、首振りDollsを結成して初めてかも。

ナオ:俺も。俺なんか、10代の頃からこんなにライヴしなかったときないかも。

ジョニー:たしかに。バンド始めてからで考えても、こんなにライヴしなかったことないな。

ショーン:同じく。

――失って初めて気づくって、よく言うけど、本当にそうかもね。最近、ライヴやイベントに人が集まらなくなったっていう話を聞くけど、いざそういう場所が無くなってみたら、こんなにも活気がなくなっちゃうんだなと、改めて大切さを感じたというか。

ジョニー:そう。いかにライヴハウスが大切な場所かっていうことが分かったし、そこを守るためにも、応援してくれて、俺たちの音楽を守ってくれるみんなの居場所を守るためにも、俺たちはいい曲作って、いいライヴして、この先も恩返ししていけたらなと思います。

ナオ:いいこと言うなジョニー。今の発言のとこ、“ナオ”に変えといて下さい!

ショーン:“ナオ”とみせかけて、“ショーン”に直しておいて下さい!

ナオ:あははは。でも、それだけみんな同じ気持ちってことだよね。本当にライヴが実際出来なくなって、本当にいつも当たり前に思っていた場所の有り難さが身に染みて分かった気がしたんです。本当に、みんなが俺たちに会いたいって思ってくれている以上に、きっと俺たちはみんなに会いたいし。何か出来ないかなってずっと考えていたし。そんなときに、ちょうど新しいヴィジョンに向けて制作していたMVと新しいアートワークが上がるタイミングでもあったから、直接会えないけど、こうしてちゃんとバンドは動いているからねって伝えられて良かったなって思ってます。

ジョニー:音楽の力って、非力なのかもなって思うこときもあるけど、音楽の力ってやっぱりすごいのかもなって思えたというか。俺たちには音楽しかないから、音楽で恩返ししていくしか出来ないから、とにかく負けずに頑張ります!

――そうだね。実際に外科的手術みたいに目に見えて人を救えるものじゃないから、非力に感じてしまうときもあるけど、こうしてライヴが止まってしまうと、本当に必要不可欠なものなんだなって思うよね。

ショーン:本当に。ここまでライヴが無くて演る方も見てくれる方も欲求が溜まりまくってたら、すごいことになるんじゃないかなって思ってます。

ナオ:感覚忘れてそうで怖いから、かなりリハスタ入って頑張ってるもんね(笑)。でも、久しぶりの1発目のライヴは筋肉痛になりそうだなぁ(笑)。

ジョニー:めちゃくちゃ新鮮かもね(笑)!

ナオ:あははは。でも、本当にライヴでみんなに会えないのが寂しくてね。と同時に、みんなにすごく助けてもらっていたんだなって思う。頼むから俺たちから音楽だけは奪わないでくれって、本気で思った。

――本当に人生なんだよね、音楽が。

ナオ:そう。それにね、聴いてくれる人たちが居るから頑張れるんだなって思えたんです。本当にみんなのおかげだなって。変な言い方になっちゃうけど、首振りDollsというバンドも、自分たちで立ち上げた会社も、俺たちが音楽出来ているのも、みんながお金を払ってライヴに来てくれたり、音源や物販を買ってくれるから成り立っている訳で。本当に俺たちに、大好きな音楽をやらせてくれてるのは、みんななんだなって思ったんです。本当に感謝しかないなって。俺たちはそのみんなの想いに、みんなが喜んでくれる音楽を届けることでしかお返し出来ないけど、それを一生懸命にやることが、みんなへの恩返しになるんだって思ってます。この場を借りて、みんなに改めてお礼が言いたいです。本当にありがとうございます。俺たちの音楽を愛してくれる人たちのためにも、もっともっと頑張ります! 本当に踏ん張り時だと思います。

ジョニー:今回みたいな事態なんて、誰も予測がつかなかった訳で。でも、この時代に生まれて、この時代に音楽をやって、こういう事態に直面したということは、きっと何かの試練なのかもしれないしね。この期間にすごくいい曲が生まれてくるかもしれないし。

ショーン:実際今、頑張って新曲作ってますからね。どれもみんなすごくいい曲だから、みんなに早く聴かせたいです!

ジョニー:音楽は無くならない! ロックは永遠に終わらない!ふ、ふふふ(照れ)。

ナオ:なんで最後照れちゃうの! そこはロックスターらしくカッコ良く言い放ってよ!

ジョニー:ん〜(照れ)。キマったと思ったのにな(笑)。

ショーン:あははは。照れなければ(笑)。でも、照れちゃう気持ち、分かります!

ジョニー:だよね〜。海外のアーティストって、こういうことサラッと言えちゃうのがすごいよなぁ〜(感心)。

ナオ:あははは。まぁ、そうやって照れるところも含めてジョニーはカッコイイんだと思うよ(笑)。「リトルサマーベリーオレンジミルク」のMV、どうかたくさんの人たちに見てもらえますように! あと、感謝を込めて、待ち受け画面に出来るようにアートワークを作ったので、是非! 首振りDollsがいつもみんなと一緒にいられますように。これからもどうぞ首振りDollsをよろしくお願いします!

photo by maru

text by 武市尚子

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