このレコメンドを書き始めてから3度目となる年の瀬に思うのは、過去2回もクリスマスを題材にした洋楽曲をピックアップしてきたものの、ひと口に“洋楽”と言ってしまうと何年経っても紹介が終わらないかもしれないほど膨大な数のクリスマスソングが存在しているということ。そこで今回は先日天国へ旅だったロクセットのマリー・フレデリクソンが最も活躍した時代の作品「80’s洋楽クリスマスソング5選」をご紹介します。
■「Merry Christmas (I Don’t Want To Fight Tonight)」 (’89)/The Ramones
70年代、80年代を代表するパンクバンド、ラモーンズ。彼らのクリスマスソングは《今夜は喧嘩したくないよ 愛してる》と恋人に向けてどストレートに歌う甘いラブ・ポップソングです。1974年にニューヨークで結成し、ニューヨークパンクの最重要バンドとして後生に語り継がれています。筆者も残念ながらリアルタイムではなく後追いで知った伝説のバンドで、ドラムのマーキー・ラモーン以外のメンバーは他界しています。イギリスのパンクムーブメントに多大な影響を与えただけではなく、U2のボノをはじめ日本のパンク界の牽引者であるザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトなど今もなお数多くのミュージシャンからリスペクトされています。
■「There Ain’t No Sanity Clause」 (’80)/The Damned
続いてはセックス・ピストルズ、ザ・クラッシュと並んでロンドンの3大パンクバンドのひとつと称されるダムド。クリスマスとは縁遠そうなバンドですが、当時、クリスマス商戦としてリリースした作品でしたがチャートは振るわず、狙い通りにはいかなかったようです。それもそのはず(?)、歌詞に「クリスマス」という単語は出てくるもののクリスマスっぽさはほぼ感じられず、そしてやっぱり音は勢いあるパンクサウンドでファンからの支持も高い楽曲です。筆者が学生時代にアルバイトをしていたクラブチッタへ毎年のように来日していましたが、今も現役! 2018年に出した最新アルバムは全英チャート初のトップ10入りを果たしています。
■「December Will Be Magic Again」 (’80)/Kate Bush
ケイトにとって初のアビーロードスタジオでのレコーディング曲で、リリースは翌80年のクリスマス時期になるまで温められていました。美しく幕開けを飾るピアノもケイト自身によるもので、彼女の独創的な世界観の中でやさしく響き渡る鈴の音と彼女の唯一無二の声が相まって、温かみと煌めきのあるクリスマスの到来を感じさせてくれる作品です。また、この曲にはまったく異なるバージョンも存在していて、そちらではプレストン・ヘイマンがコンガを聴かせてくれます。邦題は「12月は魔法の季節」とされていますが、正しくケイトだけが表現できるマジカルなクリスマス・ソング。リリースから40年が経とうという今も色褪せない名曲です。
■「Thank God It’s Christmas」 (’84)/Queen
映画『ボヘミアン・ラプソディ』によって人気が世界中で爆発的に再燃したイギリスの至宝・クイーン。彼らのクリスマスソングであるこの作品はブライアン・メイとロジャー・テイラーによる作曲で84年にリリースされたもの。アメリカの50局以上で放送されているラジオ番組「Ultimate Classic Rock Nights」に出演した際、ブライアン・メイは「曲がほぼ出来上がった時にフレディーに聴かせたら気に入ってくれて、あの美しいヴォーカルを歌ってくれた。最も控えめなヴォーカルだと思いますが私はそれがたまらなく好きなんですよ」と制作秘話を披露、また、発表当時イギリス国内ではクリスマスソングとしてあまりよく認知されなかったことなども語られています。
■「It Must Have Been Love (Christmas for the Broken Hearted)」(’87)/Roxette
TEXT:早乙女‘dorami’ゆうこ
早乙女‘dorami’ゆうこ プロフィール:栃木県佐野市出身。音楽を軸に、コンサート制作アシスタント通訳、音楽プロモーション、海外情報リサーチ、翻訳、TV番組進行台本や音楽情報ウェブサイト等でコラムや記事を執筆するなどの業務を担うパラレルワーカー。
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