ハルカトミユキが11月23日(土)に東京・日本橋三井ホールで『ハルカトミユキ Best Album Release Special Live “7 DOORS”』と題したライブを行なった。
ハルカ(Vo&Gt)とミユキ(Key&Cho)の2人だけがステージに立つスタイルで今年8月から各地を回ってきた全国ツアー『ハルカトミユキ Best Album Release Tour 2019 “The Origin”』を経てのスペシャル公演は、2人編成でのライブとしては彼女たち史上最大規模の会場での実施。舞台を覆うカーテンに“7 DOORS HARUKA/TO/MIYUKI”の文字、そして“OPEN”と書かれた白い扉が映し出され、ひんやりとしたBGMが場内に響く中、たくさんの人で埋まった開演前の客席はワクワクと緊張から静まり返っている。
やがてBGMが心臓の鼓動に、扉の文字が“OPEN”から“START”に変わり、「7nonsense」をSEにオープニングムービーへ。“2012年11月14日(ハルカトミユキのインディーズデビュー日)最初の扉が開き、その扉は2019年11月23日へと繋がっていた―”など、今日までの軌跡を暗示させるイントロダクションに続いて「Vanilla」のMVが流れ出すと、カーテンを閉ざした状態のままギターのアルペジオが奏でられ、初期の映像に今のハルカトミユキの音を重ねるという粋な演出でライブはスタートした。
「Vanilla」「シアノタイプ」「ドライアイス」とのっけから初期の名曲が続く中、デビュー7周年を迎えてさらなる進化を遂げた2人のパフォーマンスに気付かされる。ハルカの歌声は真っ直ぐに伸びていて硬さがなく、ミユキが新調したシンセの音も絶妙な丸みで楽曲を彩色。繊細さと鋭さはそのままに、より説得力のある演奏へと変貌を遂げているのがカーテン越しでも十分に伝わってきた。そして、序盤の3曲を終えて照明が明るくなり、「ヨーグルト・ホリック」の軽快なビートとともについに幕がオープン! ミユキが手拍子を求めると、オーディエンスも座席から立ち上がって歓喜の声で2人を迎える。
のちのエンドロールで明かされたとおり、この日のライブは公演タイトルの“7 DOORS”を踏まえたコンセプチュアルな構成(思えば「Vanilla」のMVは扉を閉じるシーンで始まっていた)になっていて、『The Origin』ツアーからはセットリストもアレンジも一新。さらに、凝った演出でストーリー性を感じさせながら、ハルカトミユキの軌跡を色濃く表現してみせた。“1st DOOR【閉ざした扉】”と題された序盤を経て、続く“2nd DOOR【社会の扉】”では世の中へ踏み出す人間の姿が脳裏に浮かぶ楽曲を披露。2人の青く美しいハーモニーがたまらない「二十歳の僕らは澄みきっていた」、赤い照明の下でハルカがアコギを掻き鳴らして始まった「ニュートンの林檎」と、会場の熱気はどんどん高まっていく。
ホームに到着した電車の扉が開くムービーを挟んで、次は“3rd DOOR【狂いの扉】”。デビューEP『虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。』からのレアナンバー「プラスチック・メトロ」ではハルカのヒヤリと刺さる語りとミユキの繰り出すブレイクビーツ&エクスペリメンタルな音像に、「わらべうた」では狂おしく回転する照明、空間的なノイズやアタックの強いダンスビートなどに圧倒される。楽曲の表情に合わせて鋭くロック色を増すハルカの歌も素晴らしい。「マネキン」でバックのスクリーンにマネキンが踊るCG(ハルカのいとこであるダンサーの細川優が動きを付けた)が現れたり、「振り出しに戻る」は目の覚めるようなBPMで駆け抜けたりと、緩急自在のライブ運びが続く。
扉を閉じた音が重く響いたあとの“4th DOOR【絶望の扉】”は、自分たちを解体して見つめ直すようなブロックに。ハルカのアカペラをはじめ、声のみで観客を強烈に魅了した3分半の「そんな海はどこにもない」(歌人の穂村弘に作詞を依頼)。水音やブルーの泡をインサートしつつ、憂いに深く沈んだ心を撫でるように聴かせた「POOL」。《ラララ声を聞かせて ラララ話をして》とやさしい歌声が鳴り響く「青い夜更け」のサビでは、かろうじて次の扉が開けていくような救いがあった。
絶望の底に幾粒かの水滴が落ちて開く“5th DOOR【光の扉】”。ハルカがギターを置いてミユキの伴奏に任せて歌った「春の雨」はステージに光が降り注ぐさまも美しく、オーディエンスの多くがうっとり見惚れる時間となった。また、ピンスポが差す中でハルカがアコギの弾き語りで始め、1番の終わりからミユキが音をじんわり重ねてくるアレンジの「世界」も感動的。アウトロで“声を聞かせてください”と初めてハルカが客席に呼びかけると、場内に温かい合唱が沸き起こった。さらに「光れ」へと続けば、彼女たちが3度にわたって行なってきた日比谷野外大音楽堂でのライブの光景が蘇ったりも。そんなハルカトミユキの軌跡を眩しく彩るように届けられたのは「17才」。オープニングテーマを手がけたTVアニメ『色づく世界の明日から』のムービーがバックスクリーンに映し出され、光が鮮やかに満ちあふれる演出も素晴らしく、聴く側は思わず泣かされてしまう。
「17才」が終わるとステージの幕がいったん閉じて、新曲「扉の向こうで」のMVがフルで流れる。そして、衣装変えを済ませた2人が戻ってきて“6th DOOR【愛情の扉】”へ。このブロックだけはビオラ、バイオリン、チェロのストリングス陣の協力を得て、慈愛の心が感じられる「夜明けの月」、レタータッチのリリックムービーと《愛とは手紙のようなものですね 受け取るばかりで気がつかずに 涙あふれ 滲んでしまう それでも求めてしまいます》の歌詞が沁みる「手紙」と、人との繋がりを歌ったナンバーを温かく届けた。
“どんなことを歌ってても、私にとってはすべてが希望の歌です。そんな私のすごく正直な、誰にも言えないけど誰かに言いたくて仕方なかったことを聞いてくれた歌をやります”とハルカが前置きした「その日がきたら」。“人が最初に開ける扉と最期に開ける扉は何だと思いますか?”という問いかけで始まり、ミラーボールが輝く中で願うように歌われた「種を蒔く人」。ハッシュタグ“#7DOORS1123”でファンから募った扉の写真が歌詞と共に映し出された「LIFE 2」で、人生を表現した全編が美しくまとまっていく。
“長いこと準備してきたこの『7 DOORS』ですが、たくさんのドアを毎日毎日くぐり続けて、こうして日本橋三井ホールのドアに辿り着くことができました。本当にありがとうございます。みなさんもきっといろんなドアをくぐってがんばって、今日このドアを選んできてくれたと思ってます”(ハルカ)、“『7 DOORS』ということで7周年でもあるんですね、ハルカトミユキは。そんなときにすごく素敵なホールで、たくさんの人の前で音楽活動を続けられてることが嬉しいです。私たちは2人組なので、バンドでも弾き語りでもなくて。そこにしがらみを感じながらやってきたんですけど、今日ここでようやくドアが開けたんじゃないのかなと思ってます。これからもいろんなドアを開いて、いろんな挑戦をしていきたいです”(ミユキ)。
終盤、オーディエンスに感謝を告げる2人の表情はとても清々しい。“7th DOOR【命の扉】”を締め括ったのは、また次の扉の先で会えたら嬉しいという気持ちを込めた新曲「Continue」。酸いも甘いも含んだハルカトミユキらしさと《こんな調子でこれからもやっていこうよ》と自然体で歌う明るいメロディーでさらなる変化を最後に感じさせ、2時間半の濃密なスペシャルライブは幕を下ろした。
「扉の向こうで」と共に流れたエンドロールを経て、扉の文字は“CONTINUE”に変わっていた。ホールの利を存分に活かしたパフォーマンスで自身のベストアクトを更新したハルカトミユキ。ネクストドアとして、年明けのワンマンライブ、自主企画、初のモバイル会員限定イベントも発表されている。詳しくはオフィシャルサイトをチェックしてみてほしい。
撮影:Tetsuya Yamakawa/取材:田山雄士
【セットリスト】
SE.7nonsense
<1st DOOR【閉ざした扉>
01.Vanilla
02.シアノタイプ
03.ドライアイス
<2nd DOOR【社会の扉】>
04.ヨーグルト・ホリック
05.二十歳の僕らは澄みきっていた
06.ニュートンの林檎
<3rd DOOR【狂いの扉】>
07.プラスチック・メトロ
08.わらべうた
09.マネキン
10.振り出しに戻る
<4th DOOR【絶望の扉】>
11.そんな海はどこにもない
12.POOL
13.青い夜更け
<5th DOOR【光の扉】>
14.春の雨
15.世界
16.光れ
17.17才
18.扉の向こうで
<6th DOOR【愛情の扉】>
19.夜明けの月
20.手紙
<7th DOOR【命の扉】>
21.その日がきたら
22.種を蒔く人
23.LIFE 2
24.Continue
<ライブ情報>
1月12日(日) 東京・下北沢GARDEN ※ワンマン
1月14日(火) 東京・渋谷LOFT HEAVEN ※モバイル会員限定
2月14日(金) 大阪・南堀江knave ※モバイル会員限定
2月15日(日) 福島・LIVE SQUARE 2nd LINE ※ワンマン
2月21日(金) 東京・新代田FEVER
◎チケット情報ページ:http://bit.ly/37YvTkQ
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