楽曲はもちろんのこと、ライヴや作品のパッケージなど、アーティストはさまざまな角度でリスナーを楽しませてくれるが、MVもその魅力を知れるひとつの方法。今回は演出にこだわっているMVをピックアップ! 1度観たら夢中になってリピートしてしまうこと間違いなしの5本を紹介します。
■「ロマンチシズム」(’19) /Mrs. GREEN APPLE
資生堂『SEA BREEZE』のCMソングとしてもオンエア中の人気曲のMVは一発録りで制作! 画面が上下で二分割になっており、それぞれ違ったカメラのアングルを楽しめる上に、どちらかにメンバーが登場するというトリッキーな仕様になっている。《あなたに恋する私に気づいて欲しいのです。》と恋に臆病な気持ちを歌いつつも、主人公の男性が告白の決意を表すような赤い服で街に繰り出し、街中の人たちが応援しているような演出も見逃せない。好きな人がいるけど、勇気を出せない人たちの背中を押してくれそうだ。果たして、その告白の行方はいかに!?
■「君の瞳に恋してない」(’18) /UNISON SQUARE GARDEN
メンバーの前に巨大なリンゴが落ちてきた!と思いきや、遠近法を使った演出。出だしからして驚いたが、ここからさらにさまざまな仕掛けで私たち視聴者を楽しませてくれる。セットが剥き出しになっているスタジオにはリアルさもあるけれど、虫眼鏡鏡や鏡などの身近なもので見せるトリックアートは新鮮で、歌詞にある《間違った虚像 煎じて間違った未来像》や《小さじ一杯のカラクリ》とリンクしている。8月24日(土)までの期間限定でフルバージョンも公開中なのでお見逃しなく!
■「TAO」(’18)/yahyel
神秘的なサウンドが響き、画面は天井を映し出すーー。少し不気味とも言える映像の始まりから、なんだか気持ちがざわつき、人間の足が見えたところで、このカメラワークは倒れて動かなくなった人の目線になっていることが分かる。まるで自分が引きずられているような錯覚に陥ってしまいそうだ。“この引きずられている人は死んでいるのか?”という緊張感がずっと続いていき、途中で謎の男が突然頭部を蹴り上げるシーンも。ラストの演奏シーンで映し出された池貝 峻(Vo)の姿を観て“あっ!”と気が付く部分もあり、“古い自分に別れを告げる”というメッセージを受け取れる。
■「きみのみかた」(’18) /きゃりーぱみゅぱみゅ
2011年よりきゃりーぱみゅぱみゅの音楽プロデュースをしている中田ヤスタカが、彼女への誕生日プレゼントとして書き下ろした楽曲。ピンク色に染まったファンシーなセットからしてインパクト大なMVでは、歌詞とシンクロするタブレットの映像に合わせてダンサーとともにパフォーマンスするきゃりー。楽曲のテンポからずれたり、少しでも立ち位置を間違えたら撮り直しになってしまうかなり凝った作品で、画面が切り替わる瞬間とダンサーたちの動きの変化がぴったり! タブレットを操る圧巻のスキルに目が離せない。ハイスキルなダンサーと制作陣をバックに従えてながらも、その演出に負けない存在感で魅了するきゃりーの凄さも感じられる。
■「LOVE SONG」(’19) /SEKAI NO OWARI
2019年2月に同時リリースされた2枚のアルバムのひとつ『Eye』に収録された「LOVE SONG」。MVは暗い館が舞台となっていて、時計の針が回り、ビリヤードの球が動き出すと音楽が鳴り、子供がFukase(Vo)に銃を向けるという衝撃的なシーンから始まる。ピタゴラスイッチのような仕掛けにワクワクさせられつつも、 SNSで袋叩きにされて通知が止まらないスマホが出てくるなど、ひとつひとつの仕掛けが子供たちが抱える闇を表現した歌詞のテーマと絡んでいるのが素晴らしい。自然が踏みつぶされ、ゴミが溜まり、廃墟のようになっていくさまは、“このままだと現実もこうなるよ”というセカオワの訴えだろう。
TEXT:川添典子
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