新元号“令和”が発表されて1週間。平成もいよいよ数日を残すのみで、大きな時代の節目を迎える喜びと若干の戸惑いにゾワゾワする昨今ですが。今回は昭和、平成、令和と元号をタイトルに持つ5曲をセレクト。今は平成30年を振り返るテレビ番組や企画も多ければ、レコードや歌謡曲といった昭和レトロに興味を持つ若者も増えていたりと、昭和~平成を振り返るには絶好のチャンス! 歴史的観点から見ても、昭和、平成と時代を象徴する文化や音楽は語り継がれ、聴き継がれていくはず! ということで。「あれから30年!」と綾小路きみまろばりに遠きにありて想うものになりつつある昭和、そして間もなく終わりを告げる平成を冠する楽曲から、俺なりに時代を検証していきます。
■「昭和」(’89)/長渕 剛
1989年3月、時代が昭和から平成に移り変わった直後にリリースされた、長渕 剛のアルバム『昭和』に収録されたこの曲。当時、まだ中学生だった僕はドラマ『とんぼ』で長渕の存在と歌を知り、「とんぼ」も収録されたアルバムを擦り切れるほど聴いたのをはっきり覚えてるし。僕に“カッコ良い大人の男”を教えてくれたのがこの作品であり、長渕 剛だった気がする。《夜明け前の街が確かに動き始めてる とうとう昭和の歴史が終わった》と歌うこの曲。例えば、長渕が今「平成」という作品をリリースしたとしたら、《街が確かに動き始めてる》と歌っただろうか?とふと考える。最近、20年振りとなる映画『太陽の家』の製作を発表した長渕。映画はもちろん、長渕を知らない世代が喰らう衝撃も楽しみだし、主題歌を務めるであろう長渕が令和の時代にどんな音楽を鳴らすのかも楽しみです。
■「ギリ昭和」(’18) /キュウソネコカミ
ヴォーカル&ギターのヤマサキセイヤが1987年生まれ。ギリ昭和生まれのメンバーで構成されるキュウソネコカミが、昨年12月に4月に新元号が発表されることも想定して製作したアルバム『ギリ平成』収録のこの曲。4月1日、新元号が発表されると同時に《明治 大正 昭和 平成 いこうぜその先へ(新年号?)》と歌う歌詞の新年号部分に《令和》をはめて、「ギリ昭和 ~完全版~」としてMVを同日中に発表。世間的には若干、ゴールデンボンバーに食われちゃった感もあるが、この発想と行動力が最高! 《俺らは実はゆとり初代》とか《疑いもなく 頑張ったのに 失敗したこと なっている》といったギリ昭和世代しか分からない苦悩や悲哀も歌いつつ、《繋ぎ目はうまく捌く任せとけ》と力強く告げる歌詞も面白い。もはや“最近の若いもん”ではない、昭和最後の世代のここからの活躍に期待大!
■「平成死亡遊戯」(’15) /アーバンギャルド
2015年12月にリリースした、アルバム『昭和九十年』収録。“昭和九十年”というパラレルな現代を舞台に、虚構と現実、本音と建前、生と死といった真逆であり隣り合わせのテーマをリアルに描いたコンセプチュアルな今作は、平成のリアルな空気感や世界観を音楽でしっかり残した貴重な一枚。90年代に実在したネットアイドルをモチーフに描かれた「平成死亡遊戯」は、ネットの普及で現実と非現実が乖離していく分岐点となった90年代を描きながら、アイドルの生声を挿入することで現代とリンク。現代の闇とそこに射す仄かな光を表現する、心にずさずさと突き刺さる曲となっている。アルバム収録曲をつなぎ、作品の軸になっている、9分オーバーの大作「昭和九十年十二月」も必聴です。つうか、アルバムで聴け! アルバム単位で聴かないのが、ネット世代の良くないところ!
■「平成ドドンパ音頭」(’14) /徳永ゆうき
元号とともに残したい日本の素晴らしい文化が音頭! 日本全国で歌い継がれる民謡の一種として、盆踊りなどの祭りにも用いられる音頭というジャンル。絶対、平成を歌った音頭があるだろうなと思って調べてみたら、案の定でいい曲発見しました! 演歌の新星、徳永ゆうきの2ndシングル「平成ドドンパ音頭」。馴染みやすいビートとメロディー…おっと、調子と旋律。そして、殺人楽句(キラーフレーズ)連発の歌詞に「誰が書いた曲だろう?」と思ったら、作詞作曲が宮沢和史(THE BOOM)とあって、なるほど納得! ちなみに歌詞に“平成”の言葉は出てきませんが、演歌の様式美を受け継ぎながら、言葉選びや韻の踏み方の新しさ、そして何より平成を代表する若手演歌歌手が歌ってるということに“平成”を名付けた意味を感じます。きっと必ず出てくるであろう、「令和音頭」も早く聴きたい!
■「令和」(’19)/ゴールデンボンバー
新元号が発表された4月1日、世を最も騒がせたミュージシャンがゴールデンボンバー! 元号発表後、すぐにレコーディングとMV撮影を開始。わずか1時間でレコーディングとMVを済ませ、YouTubeに公開したこの曲。このアイデアとスピード感も素晴らしいが、元号発表から楽曲完成まで、その全てをLINE LIVEで生中継。全国民が注目する歴史的瞬間をエンタテインメントに昇華して、ファンとともに分かち合うという心意気がなんとも素晴らしい! そして、何より特筆すべきは、楽曲のクオリティーの高さ! 元号以外は事前に用意していたので、曲を練り込む時間はあっただろうが。テンション上がるアップテンポな曲調とキャッチーなメロディー、真似したくなる振り付けと、前向きで明るく楽しい楽曲は新時代の幕開けにぴったり! この曲を聴いて、新元号施行という時代の節目を《令和 ほんの僅かに残る悔いは未来じゃもういらない》と、前向きな気持ちで心待ちにしよう。
TEXT:フジジュン
フジジュン プロフィール:1975年、長野県生まれ。『イカ天』の影響でロックに目覚めて、雑誌『宝島』を教科書に育った、ロックとお笑い好きのおもしろライター。オリコン株式会社や『インディーズマガジン』を経て、00年よりライター、編集者、デザイナー、ラジオDJ、漫画原作者として活動。12年に(株)FUJIJUN WORKSを立ち上げ、バカ社長(クレイジーSKB公認)に就任。メジャー、インディーズ問わず、邦楽ロックが得意分野だが、EBiDANなど若い男の子も大好き。笑いやバカの要素を含むバンドは大好物。
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