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田島貴男、音楽家としての魅力を存分に披露した弾き語りツアーの最終公演

甘いポップスから、ジャズ、ソウル、ゴスペル、ブルースと、さまざまなジャンルを織り交ぜた独自のサウンド……音楽が本当に好きな観客にとって、こんなにも味わい深いアコースティックライブは、そうそうはないだろう。オリジナル・ラブとして長年活動を続ける田島貴男による独奏会<弾き語りツアー2019>。フィナーレとなる2019年3月31日の東京国際フォーラム ホールCにて田島は、酸いも甘いも噛み分けた音楽家としての魅力を存分に披露してくれた。

1,500人収容の東京国際フォーラム ホールCは、弾き語りのライブとしても大きすぎない絶妙なサイズ感。会場には、長年のファンと思われる方々を中心に多くの観客が詰めかけていた。開演の予定時間を少し過ぎたころ照明が暗転し、ステージに田島が登場。まずはニューアルバム『bless You!』のポップソウルナンバーの「ゼロセット」、そして「ラヴァーマン」を披露。キレの良いカッティングを聴かせるギターはダイナミックで、田島のソロながらにもまるでバンド演奏のようなテンション感で歌い上げる。

“なかにはお花見帰りのお客さんもいるのかな、ゆっくりと楽しんでください”と客席に語りかけると、しっとりとしたバラード「疑問符」を演奏し、その巧みなファルセットにオーディエンスも酔いしれる。会場が徐々に温まってきた印象だったが、田島は“まだこの大きな会場に慣れない”と、照れを表しながらも「ハッピーバーズデイソング」を歌う。スティーヴィー・ワンダーを彷彿とさせるようなメロディ、ジャジィなカッティング、さらには田島の両足が刻むリズムとグルーヴが会場を包み込んだ。MCではMVを制作した「アクロバットたちよ」の撮影時のネタを披露。この曲は田島がひとりで撮影しており、“海岸線での撮影中に、おばちゃんたちのひやかしがすごかったんですよ”と言い、会場からも大きな笑い声が飛んだところで、そのままこの曲を演奏。複雑なギタープレイと歌を自在に組み合わせ、ロックミュージシャンとしての田島のポテンシャルの高さを見せつけた。

「希望のバネ」ではアコースティックラップスティールギターであるワイゼンボーンを膝の上に置き、スライドギターのレイドバックしたサウンドを披露。その後のMCでは、ヴィンテージギターの魅力から、アカデミー賞を受賞した映画『グリーンブック』を観て何度も泣いたことを話す。ちなみにこの映画は、クラシック畑の黒人ピアニストがアメリカ南部を用心棒とともにライブツアーで巡るという内容だが、田島は映画で演奏されるクラシックとラグタイムのリズムの違いを説明し“このことについてしゃべり始めると、あと1時間くらいかかってしまいます”と言って、笑いを誘う。このような音楽にまつわる内容のMCに大いにうなずいてしまうのも、音楽を愛する観客が集うこのライブならではと言える。続く「99粒の涙」は、ラグタイム風のアレンジでフリーなスキャットも披露した。

ここまで田島の幅広い音楽性を堪能できたが、後半は田島の歌とギターを楽しむ時間帯だ。「四季と歌」ではバラードを切々と歌い上げ、「いつも手をふり」はもっと牧歌的な雰囲気でギターを綺麗に鳴らす姿が印象に残った。「太陽を背に」ではレイドバックしたテンポで、独特のアクセントのカッティングギターをプレイ。後半はワイルドに熱を帯びていき、ブルースっぽいアドリブを織り交ぜたアグレッシブなアレンジを聴かせた。

続いて、リゾネーターギターを手に取り、田島が普段から取り組んでいるランニングをテーマにした「エブリデイ エブリデイ」を披露した。原曲はエレクトロなサウンドだが、ここではスライドバーでブルージィなアレンジを聴かせ、そのおかげもあってか、少しポップで可愛らしい感じの雰囲気の楽曲に仕上がっていた。続いて「サンシャイン日本海」では、アップテンポのポップチューンを快活に歌い上げた。

名曲「接吻」は複雑なコードと歌のメロディを同居させ、さらにアドリブっぽいソロプレイで魅了する。途中、スキャットのアドリブを披露すると、観客からも拍手喝采が起こる。“常人にはひとりで演奏するのが無理な曲、だけど何となくやってしまおう”と言うと、「グッディガール」をプレイ。アクセントのきいたファンキーなカッティング、ギターのリフと歌、さらにはラップの掛け合いまで、田島流の複合ポップスをひとりで乗りこなし、客席からは今日一番の力強い拍手が起こる。続く「フィエスタ」では、リゾネーターギターのボディを叩いてリズムを作り、そこに歌を掛け合わせる。オーディエンスからも再び手拍子が湧き起こった。田島が聴かせるソウルフルな歌い回しに合わせて、会場も熱を帯びていった。

「bless You!」では、手拍子に合わせてジャズっぽく崩したギターアレンジを披露。ソロギターを弾き進めるうちに、だんだんとソウルショウのような雰囲気となり、“clap your hand!”“bless You!”のコール&レスポンスのような歌詞が続く場面は、さながらゴスペルライブのような空気感に。テンションも最高潮になったところでギターを振り上げて音を止めると、会場からはわれんばかりの歓声と拍手が起こった。

アンコールでは「フリーライド」に続き「好運なツアー」で、ワイゼンボーンを手に取り、滋味深いブルージィなナンバーでしっとりとステージを締めるあたりに、大人の貫禄と余裕を感じさせた。

バンド編成よりも、田島のルーツでもあるソウルやゴスペル、ジャズといったブラックミュージックのテイストがさらに色濃く感じられたこの独奏会だが、何よりも、それぞれの曲にアドリブ的な要素を持たせることで、オーディエンスと会話していくようなパフォーマンスが魅力的だった。そして、田島自身が歌いながら、そして気持ち良く音楽へと陶酔していく様は、観ているこちら側にとっても、実に心地良くなれる瞬間でもあった。ライブを見終わったあと、心が少しだけ温かくなり、清々しい気持ちで会場を後にできたのは、田島と受け手の関係性が見事に築かれた、素晴らしいライブでもあったからに他ならない。

撮影:工藤ちひろ/取材:伊藤大輔

【セットリスト】

1.ゼロセット

2.ラヴァーマン

3.疑問符

4.ハッピーバースデイソング

5.アクロバットたちよ

6.希望のバネ

7.99粒の涙

8.四季と歌

9.いつも手をふり

10.太陽を背に

11.サンシャイン日本海

12.接吻 

13.グッディガール

14.フィエスタ

15.朝日のあたる道

16.bless You!

<ENCORE>

17.フリーライド

18.幸運なツアー

【ライブ情報】

『ORIGINAL LOVE “bless You!” Tour』

6月08日(土) 神奈川・関内ホール 大ホール[横浜市市民文化会館]

6月16日(日) 新潟・LOTS

6月22日(土) 福岡・福岡国際会議場 メインホール

6月29日(土) 岩手・盛岡 CLUB CHANGE WAVE

7月06日(土) 北海道・Zepp Sapporo  

7月13日(土) 愛知・名古屋ダイアモンドホール

7月14日(日) 大阪・Zepp Namba

7月20日(土) 東京・中野サンプラザホール

■ツアー詳細ページ

http://originallove.com/live/2019/01/14/2412

【CD情報】

アルバム『bless You!』

2019年2月13日(水)発売

【通常盤】(CD)

VICL-65123/¥3,000+税

【完全生産限定盤】(フォトブック*+CD)

VIZL-1527/¥4,000+税

※5,000セット限定

※写真愛好家でもある田島貴男が撮り続けてきた日々と、写真家松本直也が田島貴男のある1日に迫った『bless You!』の制作とともに流れる刹那を捉えた全88ページのフォトブック『A Day & Days』

<musicians>

小松秀行(Ba)、佐野康夫(Dr)、河合代介(Org)、鹿島達也(Ba)、

木暮晋也(Gt)、真城めぐみ(Cho)、小松シゲル(Dr)、村田シゲ(Ba)、冨田 謙(Key)、村田陽一(Tb)、小池 修(Sax)、奥村 晶(Tp)、弦一徹ストリングス(Strings)

<guests>

渡辺香津美(Gt)、岡安芳明(Gt)、長岡亮介(Gt)、PUNPEE(Rap,Scratch,SE)、

角銅真実 (Vibraphone, Conga)

■アルバム詳細ページ

http://originallove.com/news/2018/12/20/2375

アルバム『bless You!』

2019年2月13日(水)発売

【通常盤】(CD)

VICL-65123/¥3,000+税

【完全生産限定盤】(フォトブック*+CD)

VIZL-1527/¥4,000+税

※5,000セット限定

※写真愛好家でもある田島貴男が撮り続けてきた日々と、写真家松本直也が田島貴男のある1日に迫った『bless You!』の制作とともに流れる刹那を捉えた全88ページのフォトブック『A Day & Days』

<musicians>

小松秀行(Ba)、佐野康夫(Dr)、河合代介(Org)、鹿島達也(Ba)、

木暮晋也(Gt)、真城めぐみ(Cho)、小松シゲル(Dr)、村田シゲ(Ba)、冨田 謙(Key)、村田陽一(Tb)、小池 修(Sax)、奥村 晶(Tp)、弦一徹ストリングス(Strings)

<guests>

渡辺香津美(Gt)、岡安芳明(Gt)、長岡亮介(Gt)、PUNPEE(Rap,Scratch,SE)、

角銅真実 (Vibraphone, Conga)

■アルバム詳細ページ

http://originallove.com/news/2018/12/20/2375

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