平原綾香の「ソメイヨシノ」、クリス・ハートの「Still loving you 」、青柳翔の「泣いたロザリオ」をはじめ、数多くの著名シンガーに楽曲提供を行ない、幾つものヒット曲を生み出してきた、シンガーソングライター堂野晶敬。彼を中心としたバンドTOKYO RABBITが1月25日、新曲「東京」を表題曲とし、「Before Brand New Day」「Why did I」を収める3曲を配信リリースした。
■TOKYO RABBITが レーベルの中心にないといけない
自らが主宰する配信中心のインディペンデント・レーベル『TOKYO RABBIT』からのリリースとなった今回のシングルは、堂野がかねてからこだわり、自身のグループ名や法人、レーベル名にも冠してきた“東京”と称される都会感を彼ならではの感じ方や見え方、映り方を交え歌化したもの。都会に住む一人称で綴られた3人の主人公たちの心の機微が、前向きさや明日向きさも交え伝えられている。3曲ともアダルティでアーバン性を擁しており、そのさまざまなサウンドアプローチやシチュエーションも手伝い、各々独立した可視化しやすい物語や光景として展開されながらも、どこか各曲共通した“芯”のようなものがうかがえる。
これまでに2017年にミニアルバムをリリースしてきたこのTOKYO RABBIT。同作品の幅広いアプローチに対し今回の3曲は音楽の層のターゲットも音楽性もより絞り込まれた感がある。まずは自身のグループ名をレーベルに冠しながらも、ここまで自身作品のリリースがなかった部分から話を斬り込んだ。
「やはり『TOKYO RABBIT』というレーベルは、僕のバンドであるTOKYO RABBITが、売れようが売れまいが音楽としては中心にないといけないと、ここに来て改めて感じて、あえてリリースに至りました。それもあって、ここでカッコ悪いものは出せないとのプレッシャーがあったのも事実です。それもあり今作はかなり制作時間も要しましたね。ようやく各曲納得のいくものができました」(堂野)
上述と重複するが今回印象的なのは、そのアーバン性やアダルティさだったりする。
「R&Bやアーバンなポップスといった海外の要素が入ってはいますが、中にあるメロディーをよく聴くとそこには連綿とした王道のJ-POPさを感じてもらえるんじゃないかと。これからもいろいろなことをやったり、挑戦したり、取り入れたり、発信していきますが、その辺りは変わらずに保持していきたい部分でもあって。あくまでもベースは歌謡。当然、自分も歌謡をやっている自負があって。例えば、百人一首の時代からある俳句の五七五や短歌の五七五七七という譜割にどれだけ素敵な言葉を乗せられるかっていう。それが上手くマッチするとズキュンとくるわけで。そこから文化的に発展してきた側面を信じて、今回も作ってみました」
その堂野がこだわるJ-POPの定義をさらに深く尋ねてみると。
「いわゆるサビが強くて、つい口ずさみたくなるような…この国の人に好まれる、そんな音楽ですね。それらをこの『TOKYO RABBIT』では、さまざまなタイプやアプローチで作っていきたいんです。なので、今回はこのようなコンセプトとサウンドアプローチでしたが、もうすでに次回作の構想もあって。それはまた今回とは違いガラッと変わったアプローチを予定しています。そのように時々に自分の心から伝えたいことをフレキシブルに伝え発信していきたくて」
■これからも結果的に ポジティブになれる楽曲を作っていく
さまざまながら東京に於ける時間軸や人間模様が3種に分かれて描かれている感がある今作。加え、各曲に宿している次に向かっていく前夜の密かな決意や決心、その第一歩を踏み出す直前の心境が曲毎にうかがえる部分も特徴的だ。
「人の想いや考え方を変えることは難しいですが、気分だったら変えられる。そこを信じて今回は3曲作りました。実際、自分がアドバイスをした人たちも、内容も大切ですが、気分の矛先を数センチ変えるために話をするだけで状況が変わったんですよね。その実体験を自分の音楽でもやりたくて。自分では、これらを“慰めの応援歌”と称してます。
“慰めの応援歌”とは言い得て妙だ。加え、そこにはこれまで数多くの挫折や再出発を繰り返してきた堂野が描くがこその信憑性を宿していたりする。
「自分が負けそうになった時に自分に向けて書いた応援歌や鼓舞ソングですからね、どれも(笑)。この「東京」にしても、どこかそこ以外の街から夢を持ってやって来たり、何か目標や目指しているものがあって上京してくる方々も多いと思うんです。僕自身、これまでも何度も挫折をして、その度に壊れては作って壊れては作っての繰り返しでここまできましたからね。そんな夢を持ってやってきた人で、それが叶わなくて、どうしようもない気持ちを抱えて生きている人たちに向け、この歌が多少でもそのような方々の考え方を変え、前向きや次へと向かうためのちょっとしたきっかけになれたらなと作りました。これからも結果的にポジティブになれる楽曲を作っていく所存です」
次に歩き出す一歩手前というか、表現的にも“さぁ、頑張って一緒に行こう!と声高に背中を押さないところがいい。
「大人になって挫折すると次に何を目指したらいいのか分からなくなる場合も多い。そのような方がキラキラワクワクなれるというか、“自分ももう一回チャレンジしてみよう!”と思い立ってもらえる。これらの楽曲を通して、そんな気分に変えてあげたいんです。印象的に夢への応援歌のターゲットってやはり若者が中心じゃないですか。だけど、中年以上でも夢は叶えるチャンスはあるし、叶えるチャレンジをするべきなんです。それらのわだかまりを打破し、前に向かっていく活力の一部になれたら嬉しいですね」
■閉ざしてしまった心を 再び開ける歌を供給したかった
都会の中の孤独感がどれも滲み出ているのも今回の3曲の特徴だったりもする。過去を断ち切って勇気を持って次の前向きな一歩を踏み出してほしい…そんな願いも感じられる。
「今回は都会でひとりで闘っている人たちがテーマなんです。中でも「Before Brand New Day」と「Why did I」は女性目線からの歌だったりもします。トラウマってあるじゃないですか。それによって閉ざしてしまった心を再び開ける歌を供給したかったんです」
対してこだわっている感のある“東京”というキーワードを、あえてこのタイミングでタイトルに配した理由は何だったのだろう?
「東京は東京でも“中心地”の例えみたいなものなんです。特に東京自体を歌っているわけではないんです。聴いてくださる方の中の中心的な存在の街というか。その象徴をあえて“東京”と称させてもらいました。アジアでも東京は憧れの中心地ですからね。センターオブエイジア。今後はアジアのほうにも進出していきたいという希望も込めてこのタイトルにしました」
最後にこれを読んで興味を持ったファンやリスナー、そして未来のリスナーに向けて今後の自身の活動のビジョンも含めメッセージをもらった。
「スピードは遅くても構わないので、着実に多くの方に届いてほしいです。この曲をはじめ、聴いてもらいたい曲たちが他にもたくさんあって。これからそれをこのレーベルを通しどんどん届けていきたいです。今後は盤を出す予定もありますが、今後は逆にそこからの曲も後に配信でリリースしていくスタンスも予定しています。あと、この「東京」は楽曲をコンセプトにした短編映画も作ってあって、ストリーミング公開する予定なので、そちらもぜひ楽しんでください」
TEXT:池田スカオ和宏
■レーベル『TOKYO RABBIT』代表の 堂野晶敬に訊く【前編】
https://okmusic.jp/news/318052
配信EP『東京』
2019年1月25日(金)配信
<収録曲>
M-1 東京
M-2 Before Brand New Day
M-3 Why did I
◎配信先:iTunes Store、Apple Music、Spotify、Amazon、LINE MUSIC、Music.jp、Oricon、AWA、SHAZAM、OTOTOYなど、各配信サイト。
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