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安藤裕子、アコースティックライブツアーへの意気込みと、これからの活動への想いを明かす

デビュー15周年のアニバーサリーイヤーに精力的な活動を行なっているシンガーソングライターの安藤裕子が、約2年ぶりとなるアコースティックライブツアーを開催する。5月に15周年を記念した一夜限りのスペシャルライブを開催し、6月には初のセルフプロデュースアルバム『ITALAN』を発表。8月には<ITALAN CHIBIBAND TOUR 2018>と称した小編成による全国ツアーがあり、10月末には15周年記念ライブDVD『15th Anniversary Live〜長くなるでしょうからお夕飯はお早めに〜』、12月にアナログ2枚組のベストアルバム『Best Records』のリリースも決定した。メジャーとインディー、他者と自己、過去と現在、バンドセットとアコースティックセット……。さまざまな形で“安藤裕子の音楽”と向き合ってきた彼女にとって、久しぶりとなるアコースティックツアーはどんな位置付けなのか。ツアーに向けた意気込みとともに、ツアーを終えた後の“これから”についても話を聞いた。

このライブを終えて、ようやく私は、

本当の意味でのソロシンガーになるのかなって思いました

——アコースティックツアーの話の前に、15周年記念ライブから振り返っていただけますか。

安藤:今まで長年歌ってきたんですけど、境目をあまり覚えたことがなくて。10周年もほぼ忘れてたという感じだったから(笑)、区切りをつけるという意味があんまりわからなかったんだけど、近年、自分が歌えないという気持ちを味わったり、曲が作れないという感覚を覚えたりして。いろんな意味での進退を考えた時期もあったから、1個、強い区切りみたいなものを感じたライブでしたね。半分はリクエストだっていう曲選も特殊だったし、どっかこう、プロとしての分岐点みたいなものを覚えた一晩だったかな。

——その分岐点とはどういう意味ですか?

安藤:私はいつも、プロフェッショナルとして人前に立つということと、表現という意味での“歌唄い”というものの境目で揺らいでいて。でも、今回はファンの方からいただいたリクエスト曲の上位10曲は必ず歌うっていうお約束があったので、みんなが期待するような曲をやるんだっていう感覚だったし、それを楽しめたらいいなとも思ってて。もともとは、自分が本当にやりたいことが多分、みなさんには受け入れられないっていう感覚が強いんですよ。どこか歩み寄りながらやってきたりしているので、それを自分の中でも楽しんでやろうっていう感じのライブだったかなと思います。

——リクエストの結果はどう感じました?

安藤:ライブの最後に歌いそうなバラード曲ばかりが上位に来ちゃったので、セットリストを作るのが本当に大変でしたね。それに、次点で漏れてたような曲も入れないといけないし、昔から聴いてくれてるコアな人も聴きたい曲も入れたいし。かと言って、やっぱり、自分の中ではそれだけでは収まらないから、変なこともやりたいし。そう考えていたら……。

——「のうぜんかつら(リプライズ)」をやらなかったですよね。代表曲の1つなのに。

安藤:あははは。だって、トップ10に入ってこなかったんですよ」

——そこはみんな、絶対にやるだろうっていう予想のもとに投票しなかったんじゃないか、と。

安藤:だって、リクエスト曲を募集してるんだから、入ってなかったらやらないじゃない(笑)。ま、でも、それじゃいけないだろうなとも思ったので、ライブが終演した直後に音源をかけたんです。みんなにそれを聴いて帰ってもらおうって。

——その分というか、未発表曲「太陽の嘘つき」「The moon and the sun」をやりましたよね。

安藤:そうそう。ギターを弾きたいなと思って。当時もギターで弾きたいっていう思いで作った曲だったから、ちょっと引っ張り出してやるのもいいかなって。ちょっとやってみようかなっていう軽い気持ちでやりました。

——その後、20曲目に「聖者の行進」と同率1位の「さよならと君、ハローと僕」では……。

安藤:私、泣いちゃったんですよね。そこから、脳貧血みたいになっちゃって。そのあと、ぼけっとして歌ってたんですけど、本編最後の「歩く」で本気で一瞬、真っ白になって、膝をつくっていう。自分で映像を観てて、プロレスラーみたいだなって思いました(笑)。

——(笑)。涙が出たのはどうしてでした? 

安藤:わかんない。このライブは、自分が歌に入り込むということより、全うしようとしてたのね。気持ちを込めて歌うことより、舞台に立ってこの曲を歌う人っていうのを全うしようとしてたんだけど、どこらへんからかわからないけど、感情移入が強くなりすぎたのかもしれない。感情移入が強すぎるとバランスがちょっと崩れていくから。それが起きたなっていう感覚がありました。ただ、全体としては、いかに最後までやるかっていうのが自分の中でテーマとしてあって。唄い手は誰でも同じ悩みを抱えてやってるんだけど、私は副鼻腔炎もちで、気管支炎をくり返してて。当日はボイトレの先生に丹念にほぐしてもらって。ドキドキしたけど、無事にできてよかったですね。

——アンコールで「問うてる」を少しだけ歌ってくれました。

安藤:ちょこっと歌いましたね(笑)。「問うてる」も入れなきゃおかしい曲なんだけど、入る場所がもうなくて。ボリュームがね。もう入られなかった。

——全24曲を歌い終えて感じたことは?

安藤:安藤裕子という個人の15年というよりは、“チームアンディ”の集大成だったかな。エイベックスでデビューしてからの15年というのは、安藤雄司(ディレクター)/山本隆二(編曲)/安藤裕子という3人でサウンドプロダクトをやってきて。私はソロシンガーの体だったけど、実際はユニットだったと思うから。それを全うするための一夜だったかなっていう感じはしますね。どっか1個、バンドをやり切った気持ちっていうのかな。このライブを終えて、ようやく私は、本当の意味でのソロシンガーになるのかなって思いました。

あんまり行ってなかった地方にも行って、

ちゃんと人々に今の私が聴いてほしい歌を届けたい

——そして、2年ぶりのアコースティックツアーが決定しました。

安藤:もう1回、歌い手として立ち返るためには、悩んであんまり行ってなかった地方にも行って、ちゃんと人々に今の私が聴いてほしい歌を届けたいなと思って。もう1回、旅を始まるというイメージですね。

——初日は長崎ですね。2009年と2010年のアコーステックライブも長崎からでした。

安藤:私にとっては、アコースティックライブのスタートの地なので、マネージャーさんにも“長崎で歌いたいんです”ってお願いして。長崎は、生きててずっと気になる土地なんですよね。それがなんでなのか、自分ではまだ表現できないけど、長崎には知りたいことがあるんです。

——北海道を含む全7公演が決定してます。

安藤:直接歌いに行けるのが一番の楽しみですね。やっぱり、東京にいるだけだと、パッケージでの発信でしかなかったりするし。その土地に行かないとつながりのリアリティがないんですよね。だから、直接、みなさんに会いに行けるのは嬉しいです。

——ピアノはおなじみの山本隆二さんで、ギターがなんと名越由貴夫さんです。名越さんといえばエレキが思い浮かびますが……。

安藤:うちのアコースティックライブ、もはや名前だけで半分くらいエレキなので(笑)。まだ何を歌うかは決めてないんだけど、それこそ未発表の曲でやりたい曲があったりとかしますし、15周年記念ライブを終えての地方ライブなので、もうちょっと現在の自分に近づきたいという感覚もある。今、ギターを家でちょこちょこ練習してて。ギターを自分で弾いて歌える曲ないかなって思ったりしていますね。下手だけど、もうちょっと自発的なこともやりたいなと思ってます。

——楽しみにしているお客さんにメッセージをもらえますか?

安藤:お客さんは望んでないかもしれないけど、私としては、“今の自分”にもう1回、まっさらな気持ちで出会ってほしいんですよね。そうしないと、私はリスタートができないから。

——これまでを振り返るというよりは、ソロシンガーとしての新たなスタートを切った今の自分を見せるライブになるっていうことですね。

安藤:そうですね。ただ、もちろん、昔の曲もやりますし、普通に日々の暮らしの中の息抜きじゃないけど、楽しい1日になってくれたら私は一番嬉しいなと思います。帰り途で“行ってよかったね。楽しかったね。ご飯食べようっか。うまっ”みたいな1日になってくれたらいいかな(笑)。本来、ライブに行くって、自分のリフレッシュ作業の1つだと思うんですよ。私も休んでる時に人様のライブに行くことが増えたけど、そこでいただくものがたくさんあった。自分の生活の中の止まっていた何かのスイッチにできるし、キーワードをもらえる機会だったりするので、何かいいものを得て、帰ってもらえたら嬉しいかなと思いますね。ま、来たら、すげーいいことあると思う、とだけ言っときます。

——(笑)。12月にはアナログベストもリリースされます。2枚組になってますが。

安藤:1枚目は、15周年ライブのリクエストトップ10が入ってて。それだけではつまらないから、2枚目は全然違うことをやってやろうって。“秘密の裕子裏ベスト”になってます。

——ご自身で選曲した10曲が入るんですね。

安藤:そう。独断と偏見で私が選んだ裏ベストの2枚組にして。その偏見側の方が、ことごとくなんのリクエストにも入ってこないようなのばっかり。私が1人で、誰とも仲良くやってなかったらこんな曲ばっかりだったはずっていう曲たちですね。ライブDVDとアナログベストの1枚目はリクエスト曲と、みなさんの希望曲が集中して入ってるんです。完璧にお客さんに寄ったセットリストなんですけど、レコードの2枚目は、100パーセント誰の気持ちも考えないで選んでる。なんなら買うまで見ないでほしいな。買ってびっくりしてほしい。なんだこれ!ってなってほしいな(笑)。でも、これを好きだって言ってくれる人が私の真の友達なんじゃないかと思ってます。2枚目の方が好きだなって言ってくれる人と会いたいです。あははははは。

——(笑)。そして、2019年1月6日になかのZEROホールでファイナルを迎えます。その後というのはどんな展望を考えてますか?

安藤:アコースティックツアーを終えた後に、もうちょっと個人的な音楽を育てたほうがいいと思ってて。そういう修行をしたいし、そこからが本当の意味でのソロシンガーとしてのスタートになると思う。いろんな意味で、もうちょっと自分の足で立つ感じにはしていきたいなって思ってますね。もともとしゃかりきに動くタイプではないんですけど、もう1回、ちゃんと動かないといけないなって。あと、休んでる間に本を書いたり、小林(武史)さんのもとで朗読やナレーションの楽しさを知ったり、BSの番組『シリーズ 深読み読書会 横溝正史の集大成!』でもナレーターをやらせてもらって。声を操るのが好きなので、ナレーションも楽しいし、面白いなと思ったんですよね。どっか、音楽どっぷりで始めた音楽家じゃないから、自分が好きだったことも含めて、いろいろやれたらいいな〜と思ってますね。ほんとに停止の時間が長かったので、みんなに“何してんの? 大丈夫?”って心配されないくらいには、ガツガツ頑張りたいなと思います。

取材:永堀アツオ

【ライブ情報】

『2018-19 ACOUSTIC LIVE』

11月17日(土) 長崎・旧香港上海銀行長崎支店記念館 ※sold out

11月18日(日) 福岡・Gate’s7

12月09日(日) 宮城・宮城野区文化センターパトナホール

12月14日(金) 北海道・札幌 BFH ホール

12月25日(火) 愛知・愛知県芸術劇場 小ホール

12月28日(金) 大阪・ドーンセンター7階ホール

【2019年】

1月06日(日) 東京・なかの ZERO 大ホール

<チケット>

前売り¥4,500(全自由席/税込)

※3歳未満入場不可、3 歳以上チケット必要

◎福岡公演 発売中

仙台、札幌公演 11月17日(土)12:00~

名古屋、大阪、東京公演 12月09日(日)12:00~

■安藤裕子 オフィシャルHP:https://ando-yuko.com/live/

アルバム『Best Records』

2018年12月26日(水)発売

オーダー締切り:2018年11月19日(月)

※数量限定のためショートの可能性があります

【2LP】

HRLP152/53/¥4,500+税

<収録曲>

■Side A

1.サリー

2.パラレル

3.TEXAS

4.ドラマチックレコード

5.海原の月

■Side B

1.唄い前夜

2.さよならと君、ハローと僕

3.歩く

4.隣人に光が差す時

5.聖者の行進

■Side C

1.エルロイ

2.健忘症

3.いらいらいらい

4.勘違い

5.都会の空を鳥が舞う

■Side D

1.アフリカの夜

2.たとえば君に嘘をついた

3.愛の季節

4.アメリカンリバー

5.人生お見舞いtake2

DVD『15th Anniversary Live〜長くなるでしょうからお夕飯はお早めに〜』

2018年10月31日(水)発売

LNBM-1260〜1/¥4,800+税

<収録曲>

■Disc1

01. “I”novel.

02. TEXAS

03. ドラマチックレコード 04. SUCRE HECACHA

05. さみしがり屋の言葉達 06. 黒い車

07. 雨月

08. 愛の日

09. 海原の月

10. 隣人に光が差すとき 11. 蒔かれた種について

■Disc2

12. 六月十三日、強い雨。

13. あなたと私にできる事

14. 水色の調べ

15. パラレル

16. 太陽の嘘つき

17. THE MOON AND THE SUN. 18. summer

19. Lost child,

20. さよならと君、ハローと僕 21. 唄い前夜

22. 歩く

23. サリー

24. 聖者の行進

※オーディオコメンタリー収録

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