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絶頂期のジョニー・ウィンターの凄さが味わえるジョニー・ウィンター・アンドの『ライヴ』

7月16日、ジョニー・ウィンターの4回忌を迎えた。長期間にわたってブルースとロックを行き来して活動していた彼のようなアーティストは数多くのアルバムをリリースしているので、「名前は知っているけど何から聴けばよいのか…」と、若い人にはなかなか難しい選択かもしれない。とはいっても、無償で聴き放題が現状のネット環境なら何でも聴ける強みがある。そこで今回はウィンターの文句なしの傑作『ライヴ』を紹介するので、大音量で聴いてみてほしい。70’sロックの熱い演奏で熱中症を吹き飛ばそう!

■70’sロックの王道

70年代初頭はさまざまな形態のロックが次々と世に現れた、いわば音楽界のカンブリア紀である。レッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、ブラック・サバス、グランド・ファンク・レイルロードらのハードロック、CSN&Y、ポコ、ニッティ・グリッティ・ダート・バンド、ニュー・ライダース・オブ・ザ・パープル・セイジらのカントリーロック、キャロル・キング、ジェームス・テイラー、ジャクソン・ブラウン、ジョニ・ミッチェルらのシンガーソングライター、リンディスファーン、マッギネス・フリント、サザン・カムフォートらのブリティッシュ・カントリーロック、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾンらのプログレ勢、ブラスロックのシカゴにBS&T、ヒットメーカーのエルトン・ジョン、キャット・スティーブンス、ラテンロックのサンタナやマロ、ほかにもソフトロック、フォークロック、ジャズロック…などなど、日々ヒットチャートに数え切れないほどの新しいグループやシンガーが登場し、ラジオで情報をゲットしてはレコード店でシングル盤を買う(LPは高いので、たまに購入する程度)という幸せな時代。

しかし、日本のラジオや雑誌にあまり登場はしないが、ロックの本場アメリカでは絶大な人気を誇るアーティストというのも、これまた数え切れないほどいるのである。70年初頭に中学生だった僕はカーペンターズの大ヒット曲「スーパースター」からスワンプロックやサザンロックに辿り着き、頻繁にメディアで取り上げられるわけではないけど、カッコ良いロックが相当数あることに気付いた。ジョニー・ウィンターとの出会いもそうだった。ラジオでヒット曲がオンエアされていたわけではなかったが、周囲のロック好きの先輩たちが「すごいギタリストがいる」と、ジョニー・ウィンターの名前を口々に語っていたのだ。で、知り合いに借りて聴いたのが、ジョニー・ウィンター率いるジョニー・ウィンター・アンドの『ライヴ』であった。

■テキサスの天才兄弟

ジョニーとエドガーのウィンター兄弟はテキサスの一部ではよく知られた神童で、10代半ばの時には兄弟揃ってすでに地元のインディーズからレコードを出していた。現在、それらのシングル盤を集めたコンピが『Winter Essentials 1960-1967』(‘03)として出され、何度かタイトルを変えて再リリースされてもいる。日本では彼はブルースギタリストとして認知されているが、実は若い頃は雑食性でR&B、ソウル、ロカビリー、ロックンロール、フォークロックなど、アメリカのルーツ系音楽をひと通り演奏しつつ、当時流行っていたサイケデリックな要素も加えていた勉強家である。

■100万ドルのブルースギタリスト

68年、ソロデビューアルバムの『The Progressive Blues Experiment』でブルースマンとしてマイナーデビュー、この作品では全曲ブルースのみで勝負している。ヴォーカルもギターもすでにウィンター節が炸裂している。特に彼の黒っぽいヴォーカルは素晴らしい。その後、大手のコロンビアと契約が決まり“100万ドルのブルースギタリスト”というキャッチフレーズで、69年に『ジョニー・ウィンター』をリリースする。ここではキャッチフレーズとは裏腹にサザンロックやスワンプロック的なテイストも感じさせ、彼の器のでかさを垣間見せるアルバム作りで、メジャーでのアルバム制作も難なくこなしている。ここからはエドガー・ウィンターも合流し、巧みなキーボードとサックスで兄貴を盛り上ている。同年暮れに『セカンド・ウィンター』を2枚組(4面は録音なし)でリリース、ロックンロールの「ジョニー・B・グッド」やディランの曲「追憶のハイウェイ61」を取り上げるなど、新たな側面を組み込みながらウィンターのサウンドは完成に近づきつつあったと言えるだろう。

■ジョニー・ウィンター・アンド結成

その後、ウィンターはアメリカを代表するギタリストのひとりであるリック・デリンジャーとジョニー・ウィンター・アンドを結成、70年には『ジョニー・ウィンター・アンド』をリリースし、メロディアスなナンバーやサザンロック風のものなど、それまでとはまったく違ったサウンドでファンを驚かせた。何と言っても、このアルバムにはウィンターを代表する名曲「ロックンロール・フーチークー」(デリンジャー作)を収録しており、ロックファンにこのグループの名を大きく印象付けた作品となった。デリンジャーがヴォーカルを取る曲が増えているのは、ドラッグ中毒によるウィンターの不調からとも伝えられていたが、当たらずとも遠からずだろう。しかし、アルバムの内容は素晴らしく、ウィンターの右腕として、ギタリストとしてもソングライターとしてもデリンジャーの手腕が冴え渡った仕上がりとなった。

■本作『ライヴ』について

さて、前作から1年経ちライヴ盤としてリリースされたのが本作『ライヴ』である。ロックアルバムとして落ち着いた仕上がりとなった前作のサウンドは微塵もなく、ここでのウィンターはブルースとロックンロールのみを弾きまくり歌いまくる。ストレートのみの剛速球を最初から最後まで投げ込む、それだけなのだが聴くたびにねじ伏せられる。要するに、ロックの生演奏のエッセンスが凝縮された作品なのである。ウィンターとデリンジャーの畳み込むようなソロの掛け合いは、何度聴いても引き込まれる。これだけ弾きまくればもちろんミストーンはあるが、そんな些細なことはまったく気にならない。

収録曲は6曲で、ブルースが2曲、ロックンロールが2曲、ストーンズが1曲、ウィンター作が1曲という内容になっている。スタジオ録音の前作では、キーボードや管楽器等が使われていたが、ここではギター2本、ベース、ドラムというシンプルな編成で、1曲目から飛ばしまくる。とにかく熱いライヴである。

本作以降のウィンターは弟とデリンジャー争奪戦(デリンジャーはエドガー・ウィンター・グループのメンバーでもあった)に敗れてソロに戻るし、それよりもドラッグで体がボロボロになってしまうのだ。それだけに、ギターのキレとエンジン全開の熱いライヴの醍醐味を味わえるのはこのアルバムを置いて他にないので、ジョニー・ウィンターを聴くなら本作『ライヴ』をまず聴いてほしい。ロック好きなら、おそらくぶっ飛ぶはず…。

TEXT:河崎直人

アルバム『LIVE』

1971年発表作品

<収録曲>

1. Good Morning Little School Girl

2. It’s My Own Fault

3. Jumpin’ Jack Flash

4. Rock And Roll Medley: Great Balls Of Fire〜Long Tall Sally〜Whole Lotta Shakin’ Goin’ On

5. Mean Town Blues

6. Johnny B. Goode

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