新型コロナウイルス感染予防の観点から来年へと開催が延期された日本の音楽フェスのパイオニア『フジロックフェスティバル』(以下、『フジロック』)。その喪失感を埋めるように、先週末配信された特別ライヴ番組『FUJI ROCK FESTIVAL’20 LIVE ON YOUTUBE』はご覧になられましたか? 過去の映像を観られた喜びの反面、想いが再燃してしまった人も少なくないはず。そこで今回は「もしも願いが叶うなら、あの年の『フジロック』でもう一度見たい! 聴きたい! あの5曲」をご紹介します。
■「CISCO 〜想い出のサンフランシスコ (She’s gone)」(’97) /THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
血がたぎるロックを全身で感じる体験を観る者に幾度となく与え、日本のロック史にその名を深く刻み込んだミッシェル・ガン・エレファント。『フジロック』には98年の豊洲、苗場では00年に日本人バンドとして初のヘッドライナーを飾り、03年が最後の出演となりました。番組では00年の「GT400」が配信されましたが、10代の頃にバイト代を握りしめて彼らのライヴに足しげく通っていたミッシェル世代の筆者としては、同じ00年でもヘッドライナーとして堂々オープニングを飾った「CISCO」がもう一度観たいのであります。なぜなら、自分の愛する彼らの音楽が世界一流のアーティストと同位置に並んだ瞬間に感じた、あの尋常ではない興奮は生涯消えることがないからです。
■「日曜日よりの使者」(’95) /THE HIGH-LOWS
97年の嵐の天神山のメインステージでは雨風にやられて寒さに震えたオーディエンスがルーベンスの絵を見て「パトラッシュ、もう疲れたよ」とつぶやくネロのように疲労困憊だったところに「相談天国」や「ロッキンチェアー」「HAPPY GO LUCKY」などを炸裂させてオーディエンスにパワーを与え、救ってくれたのが↑THE HIGH-LOWS↓でした。しかし、それを超え、オーディエンスの多くを泣かせたのは02年にグリーンステージで奏でた「日曜日よりの使者」と曲前のヒロトさんのMCです。これまでに筆者が観た数々のフジロックのステージの中で最も感動した名台詞であり名シーンをもう一度聴きたいと思う気持ちと同じかそれ以上に、あの場にいなかった人たちにも知ってほしいです。
■「Wattershed」(’95) /Foo Fighters
第1回目以降、『フジロック』に通算4回出演しているフー・ファイターズ。最近では番組で配信された15年に出演しましたが、デイヴが骨折していたりと万全の状態ではないながらも7年振りの来日に歓喜するオーディエンスの盛り上がりが印象的でした。日本のみならず海外でのライヴにも足を運び続けているバンドですが、彼らの『フジロック』初年度のステージの記憶がほぼありません。現地で観ていたはずなのですが、うっすらと「Wattershed」を聴いたような気がする程度…。できることなら嵐に負けない完全防備をして、97年のフーファイ出演時間にタイムスリップして、もう一度あの日のライヴを体感したいと20年以上経過してもなお後悔にも似た感情を持ち続けています。
■「Freedom」(’91) /Rage Against The Machine
音楽フェスというものを経験した初めての場が『フジロック』の第一回目だったことがその後の人生を左右したと言っても過言ではないため、どうしても97年に観た光景がどのフェスでの記憶よりも先立ちます。中でもレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのライヴは凄まじく、今思えばあの時に初めて本物のライヴを体感しました。泥濘と化したオーディエンス・エリアでは水蒸気が立ち込め、周りがよく観えない状態ながらも前方で食い入るようにステージを観ていたらモッシュに巻かれて転倒。「死ぬかも」と思った瞬間、全身タトゥーのお兄さんがスッと抱えて助けてくれた直後に始まったのが「Freedom」。ライヴに助け合い精神があることを初めて知った夏でした。
■「Give It Away」(’91) /Red Hot Chili Peppers
『フジロック』の節目で必ず出演してきたアーティストの中でも初回から現在に至るまで、ヘッドライナーとして参加し続けているのはレッド・ホット・チリ・ペッパーズの他にいません。『フジロック』が20周年を迎えた16年のライヴも見事でしたが、もう一度観たいのは97年の天神山でのパフォーマンスです。レッチリ登場時には観客の多くが体力の限界に達していたものの雨風は強くなる一方で、レッチリ目的で参加した連れは1曲目で失神。周囲の人もバタバタと倒れるカオスの中、失神ガールを引きずってシャトルバス乗り場へ着いた時に聴こえてきたのが「Give It Away」でした。その後もはぐれた友人の捜索は朝まで続いたりと悪夢のような夜でしたが、もう一度戻りたい夜でもあります。
TEXT/早乙女’dorami’ゆうこ
早乙女’dorami’ゆうこ/栃木県佐野市出身。音楽を軸に、コンサート制作アシスタント通訳、音楽プロモーション、海外情報リサーチ、翻訳、TV番組進行台本や音楽情報ウェブサイト等でコラムや記事を執筆するなどの業務を担うパラレルワーカー。
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