真夏のソウルの祭典としてすっかりお馴染みになった『SOUL POWER』。14回目を迎える本年は、『SOUL POWER ヨコハマ/なにわ SUMMIT 2019』として開催。東京は場所を横浜に移しパシフィコ横浜で、大阪はグランキューブで開催される。このイベントのホスト・アーテイストである、ゴスペラーズの村上てつや、安岡 優、Skoop On SomebodyのKO-ICHIROの3人に話を訊いた。インタビュー後半、ソウルミュージックに欠かせないファルセット(=裏声)についての“村上てつや持論”は必読の価値あり!
――「SOUL POWER」らしさ、このイベントの魅力とは?
安岡 優(以下、安岡):これだけいろんなアーティストが他のアーティストとコラボレーションするイベントは、他に無いと思うんですよ。まずここが「SOUL POWER」の大きな魅力のひとつですよね。年が離れていても、同じ音楽をやっているんだっていうのが、お客さんにもすごく伝わるステージだと思うんです。だから “自分が好きなアーティストや音楽には、もっと広い世界があるんだ”って知ったり“こういうのもソウルなんだ”って見つけたりして、最後には “もっといろんな曲を聴いてみたいな”って思ってもらえると嬉しいですね。
――ここ数年の出演アーティストをみると “ソウル”という括りは飛び越してるなと感じるんですよね。
村上てつや(以下、村上):もはやソウルミュージックって部分は、越えていいかなと思うんですよね。イベント全体としては、音楽に心響き合う人たちであればいい。安岡も言ったように、いろいろコラボレーションが多いので、他のイベントよりもアーティスト同士が接する機会が多いんですよね。だからイベントが終わる頃には、結構、仲良くなることが出来る。例えば、去年(=2018年)出てくれたAnlyさんとか、20代前半くらいの女性ソロシンガーから見たら、もう……結構、おっかないでしょっていう(笑)。
――大人の男性、しかもスーツを着ているアーティストがたくさんいて、アフロもいたりしますもんね。
安岡:音楽的にもなかなかディープな世界ですから(笑)。
村上:そう。ステージ上だったらまだいいにしても、オフステージで“私何しゃべればいいのかな”って思われても仕方がない。そこは俺たちもわかってて(笑)。
KO-ICHIRO:ははは(笑)。そうだよね。揃うと、傍から見たらすごいかもしれないね(笑)。
村上:とりつくしまもないって感じかな、と(笑)。でも、音楽で接する時間を多く作っておけば、お互いがわかってくる。
――当日のコラボレーションのために、ライヴ当日以外にもリハーサルがありますもんね。
村上:そうなんです。だから、お客さんはもちろんだけど「SOUL POWER」に出演してくれたアーティストにも、どうやって楽しんでもらえるかっていう。打上げも含めてね。もちろん、俺たちも楽しみたいっていうのはありますけど。
安岡:ティーンネイジャーのアーティストも、時間の制限はあるけど、打上げに来てくれるもんね。
村上:やっぱり、出演者も「SOUL POWER」ってイベントを通して、もう少し話したいなって思ってくれてるからだと思うんです。
安岡:もうお互いの心の扉が開いてる状態で、打上げに行くことが出来るんですよね。いろいろ話す中で、例えば僕だったら“普段はどうやって作詩してるんですか”とか聞かれたりするんですね。逆に僕が“あれはどうしてるの?”とか聞くこともあるし。結構、音楽的に突っ込んだ話も、フランクに出来る。“これ質問してもいいのかな”ってためらいを感じないくらいの雰囲気なんですよ。
――毎年このイベントがあることで、改めて自分のルーツを感じたりすることも?
KO-ICHIRO:ありますね。ここ何年か「SOUL POWER」をテーマにしたコンピレーションアルバムを出させてもらっていて、毎年イベントのアンコールは、そのアルバムをテーマにしたメドレーを演奏しているんです。去年だったら80年代ディスコ、とか。自分たちがいろんなものをもらってきたソウルミュージックをテーマに、ソウルが好きな仲間たちと一緒に音楽を楽しめる。その場所にいるだけで、即アマチュア時代の気持ちに戻れたりするんです。僕は演奏をする立場ですけど、ソウル好きなヴォーカリストたちや、ミュージシャンのサポートをさせてもらえるんです。普段なら、そんなことはほとんど無い。ミュージシャンとして、すごく幸せだな、と。こういうチャンスをもらえるのも「SOUL POWER」ならではですよね。
――毎回、裏テーマがある「SOUL POWER」ですが、今回はモータウンだそうですね。
村上:今年(=2019年)はモータウン60周年なんですよね。今、コンピレーションも含めて、いろいろ切り口を考えている最中です。モータウンって、世界中にそれこそ数えきれないほどのマニアがいるくらい偉大な音楽なので。マーチンさん(=鈴木雅之)の教えで“マニアックになりすぎるな”って言葉があるんですよ。毎年思うことは「SOUL POWER」は、やっぱり大きな会場でやるイベントだから、いい意味で敷居をさげて門戸を開いてやるべきだな、と、モータウンも掘っていけば、ものすごく深いとこまでいく音楽だけど、とてもポップなものだと思うんですよね。
――確かに。ティーンネイジャーのころ、普通にポップスだと思って聴いていた曲が、じつはモータウンだったってパターン、たくさんあるんですよね。モータウンだって後から知った、みたいな。
村上:まさにそうなんですよね。俺、最初に「恋はあせらず」(原題:You Can’t Hurry Love)を聴いて“この曲いいな”って思ったの、フィルコリンズ(1982年発売)だったって記憶があって。シュプリームス(オリジナル/1966年発売)も、もしかしたら聴いていたかもしれないんだけど、最初に印象に残って“いいな”と思ったのは、フィルコリンズのほう。
安岡:俺もモータウンに最初に触れたのはビートルズなんですよね。ビートルズはあの時代に、海を渡って来たモータウンサウンドに刺激を受けて、彼らなりのポップスを作ってたんだろうなと思うんです。アメリカのソウルミュージックのアーティストたちも、当時、どこまでもポップミュージックを追及していて、だからそれが海を渡って英国でも同じように音楽として愛されたんだろうな、と。今年の「SOUL POWER」にいらっしゃった方たちもきっと“これもモータウンなんだ、あれもモータウンだったんだ”って思うんじゃないかなっていう。モータウンって言葉は知らなくても、既に自分の中にあったんだっていうような感じですよね。そのきっかけが、コンピレーションアルバムだったり、「SOUL POWER」だったらいいなと思いますね。
――わかりました。突然の質問なんですが、ソウルミュージックにおける裏声(=ファルセット)の位置づけとは?
村上:えっ(笑)。そんなの、1番最初に聞いてくださいよ(笑)。
――すみません。
村上:まず日本の裏声の歴史からになりますけど。
――いいですね。とても興味があります。
村上:これがちょっと特殊で。そもそも女性の声色を真似る音として使っていたというのがあるんです。女性言葉の歌詞を男性が歌うってパターンで、ムードコーラスとかがそう。昔、ムード歌謡が流行っていた頃は、女性言葉の歌詞を男性が歌うことって、結構多かったんですよね。
――あぁ確かに多かった。そういうヒット曲もたくさんあった。
村上:ですよね。裏声で例えば“私を抱いてください”みたいな歌詞を男が歌うわけですから、すごい世界ですよね(笑)。
――はい。個人的には、受け入れがたい世界でした。まだ小さかったっていうのもあるかもしれないですが。
安岡:多感な時期は特にね(笑)。
――おかしなことになってるなぁ、みたいに思ってました。
村上:そう、つまり日本人は気が付いちゃったわけです。“あれはおかしい”って(笑)。それで80年代、女性言葉の歌詞を男性が歌うってスタイルが無くなる……つまり断絶があった(一同爆笑)。
――言われれば、確かに。いわゆるテレビでは少なくなったと思います。ニューミュージックでは多少あったかもしれないけど。
村上:ところが!
――どうしました?
村上:だいぶ前、ブルースの研究書みたいな本を読んでいたら、衝撃的な言葉が出て来て。“黒人におけるファルセットは、性欲の表現だ”と。ソウルじゃなくて、ブルースってところも含めて、衝撃だったんですよね。ソウルは女性に対して歌う音楽だけど、ブルースはどっちかっていうと俺様の世界が多いなと思うんです。例え、女性に対して歌ったとしても“俺の金だけむしりとって、去って行きやがったぜ”みたいな、そういう歌詞が多いじゃないですか。
――確かに。ブルースの“blue”は「孤独」って意味合いもありますし、男の孤独を感じる歌詞も結構あるかも。
村上:そんな中でね、多くはないけど“ファルセットは……”って言葉を読んで、改めてブルース聴きなおしたりしたんです。そのとき、今まで日本で無かったファルセットの使い方があるんじゃないかと、すごく可能性を感じたんです。
――つまり日本の音楽シーンにおける、新しい形の裏声がある、と。
村上:そう。20代前半で、めちゃめちゃニッチだけど、これは勝機があるかもしれないって思った。
一同:(爆笑)。
安岡:ゴスペラーズがデビューした頃は、日本語の歌詞でファルセットを使う男性アーティストは、あまりいなかったし。
――そうですね。最近は、バンドでもヴォーカルのひとつのスキルとしてファルセットが当たり前になってますよね。ただ、やっぱり「SOUL POWER」で聴くファルセットとはまったく違う。
村上:日本語でファルセットを使ってソウルフルに歌う……っていうところで言ったら、俺、結構、発明したと思ってるんです。
安岡:すごいね(笑)。
KO-ICHIRO:ははははは (笑)。パイオニア?
村上:男が男の歌詞で歌うソウルフルなファルセットって、俺が切り開いた……くらいに思うんだけどな(笑)。
安岡:わかるよ、わかるわかる。情熱があって溢れて、思わず裏声になってしまった、みたいな。そういうファルセットってことでしょ。しゃべるときもそうじゃない?感情の高ぶりで思わず声が裏返っちゃうこと、あるでしょ(笑)。我々の世代って、ロックの文脈でいうと、ファルセットを使わない男っぷりがあった最後の時代なんだよね。
――あぁ、ハードロックやメタルで、どこまで裏声を使わずに高い音が出るか、みたいな。80年代後半~90年代初頭くらいですかね。その後は、デスボイスというのが出て来て、また違う男っぷりが出てきますからね。
安岡:そうだよね。で、そことは違うベクトルで、ファルセットの男っぷりっていうのが、あると思うんだよ。だから「SOUL POWER」に来る人は、思わず出てきちゃった裏声を探してもらうと、面白いかもしれない。
一同:(笑)
――KO-ICHIROさんはどうです?ファルセットについて思うことはないですか?
村上:聞きたい、是非聞きたい(笑)。
KO-ICHIRO:今年の「SOUL POWER」に、初めてw-inds.が出るんですよね。(w-inds.の)KEITAくんはソロで出てもらったことがあるんですけど、彼の裏声を生で聴いたときには、本当にすごいなとびっくりしました。やっぱりファルセットって、歌い手にとって武器だと思うんですよね。声質+、ファルセットの使い方で、聴く人を一発でノックアウト出来ますから。
撮影:近藤宏一/取材:伊藤亜紀
【公演情報】
■『SOUL POWER ヨコハマ SUMMIT 2019』
8月19日(月) 神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール
開場17:30 / 開演18:30
出演:鈴木雅之/ゴスペラーズ/Skoop On Somebody/ダンス☆マン/w-inds. and more!!
8月20日(火) 神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール
開場17:30 / 開演18:30
出演:鈴木雅之/ゴスペラーズ/Skoop On Somebody/ダンス☆マン/CHEMISTRY and more!!
■『SOUL POWER なにわ SUMMIT 2019』
8月31日(土) 大阪・グランキューブ大阪
開場17:30 / 開演18:30
出演:鈴木雅之/ゴスペラーズ/Skoop On Somebody/ダンス☆マン/CHEMISTRY and more!!
9月01日(日) 大阪・グランキューブ大阪
開場16:00 / 開演17:00
出演:鈴木雅之/ゴスペラーズ/Skoop On Somebody/ダンス☆マン/w-inds. and more!!
<チケット>
全席指定:7,500円(税込)
※3歳未満入場不可 / 3歳以上要チケット
・ディスクガレージ先行受付 ※横浜のみ
5月01日(水)18:00~5月20日(月)12:00
詳細URL:http://bit.ly/2Y7s8DM
・一般発売
5月25日(土)10:00
<お問い合わせ>
DISK GARAGE:050-5533-0888(平日12:00~19:00)
※車椅子でご来場の方は事前にお問合せ先までご連絡ください
■『SOUL POWER ヨコハマ/なにわ SUMMIT 2019』オフィシャルHP
http://soulpowersummit.info/
■『SOUL POWER ヨコハマ/なにわ SUMMIT 2019』オフィシャルFacebook
https://www.facebook.com/soulpowersummit/
■『SOUL POWER ヨコハマ/なにわ SUMMIT 2019』オフィシャルTwitter
https://twitter.com/soulpowersummit
■『SOUL POWER ヨコハマ/なにわ SUMMIT 2019』オフィシャルInstagram
https://www.instagram.com/soulpower_summit/
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