KREVA主催による音楽の祭典『908 FESTIVAL 2018』が、今年は8月31日の日本武道館で開催された。
ステージの床下から、ド派手な衣装のKREVAが姿を現し、最新作の表題曲「存在感」で丸裸のエモーションを投げかけてくるというオープニングだ。歌い終えた瞬間に再びリフトで床下へと消える KREVAだったが、続く「全速力 feat. 三浦大知」では突如アリーナ西側にKREVAが、東側に三浦が姿を見せ、悲鳴のような嬌声を浴びながら通路を駆け抜ける。さすがは『908 FES』の顔役と呼ぶべき2人、率先してフェスの空間を楽しみ尽くしている。
この2人からステージを預けられたのは、尾崎裕哉だ。風通し良く力強い曲調のロックナンバー「Glory Days」を披露すると、「何回も武道館には来てるんですけど、初めてこのステージに立ちます」と喜びを溢れ出させる。大学の先輩に当たるKREVAの、あの「K-ing」武道館2DAYSのノンゲストDAYにも足を運んでいるそうだが、ここで披露された新曲「想像の向こう」はKREVAによる作詞・作曲。開放感に満ちたフォーキーなロックナンバーであり、熱の篭ったパフォーマンスにKREVAもコーラス&タンバリンで参加した。
衣装や靴が左右非対称のJQ from Nulbarichは、普段と異なるバンドメンバーと共に「ain’t on the map yet」や「NEW ERA」を抜けの良いソウルボーカルで届けてくる。「神様をお呼びしてもよろしいですか」とKREVAを迎え入れると、「僕は神じゃないですけど…じゃあ今日だけ、この曲だけ、神々の歌として聴いてください(笑)」と告げて、「Stay The Way feat. KREVA」を放つ。JQの優しい包容力に満ちた歌い出しから、バンドサウンドが沸々と高揚し、KREVAのラップとコントラストを描きながら情熱の形を伝える、素晴らしい新曲であった。
JQを見送ったKREVAは、「誰かと曲をやった後って、なんか寂しくなっちゃうな」と「くればいいのに」を歌い、最初のコーラス部分をオーディエンスに委ねる。これまでの「908 FES」でも一期一会のコラボを生んできたこの曲だが、今回デュエットするのは高畑充希。肩肘張らずとも味わい深い美声が、陶酔感を誘う。「KREVAさんのおかげで、初めてのフェスです。今日は、『紅』は歌いません!」と笑わせてからの、スターダスト・レビュー「木蓮の涙」カバーでは、歌い終えた瞬間にものすごい大喝采が上がっていた。
高畑充希による紹介を受けた絢香は、昨年に引き続いての「908 FES」出演。小気味好いバンドサウンドの“にじいろ”で場内を一気に絢香色へと塗り替え、今年リリースされた「ハートアップ」ではもちろん三浦大知とコラボレーションを果たす。そして、前回の「908 FES」出演のために書き下ろされたKREVAとのコラボ曲“Glory”は、ちょうどこの日配信リリースが開始。今回のステージでも披露されたが、2人の歌声の相乗効果で感情表現を膨らませる名曲である。
さて、ここで鳴り響くのは学校のチャイムだ。学ラン姿の尾崎裕哉が、ステージの端でアコギを携え、おもむろに弾き語りを始める。<校舎の影 芝生の上 吸い込まれる空 幻とリアルな気持 感じていた>。父・尾崎豊の「卒業」が、武道館にこだましている。気の遠のくような光景だった。昂ぶったシャウトの声質はとりわけ父親譲りに思える。<この支配からの 卒業>と1コーラス目を歌い切る瞬間に、KREVA先生が登場して「おーい尾崎! いつまで校舎の影にいるんだよ」と声を上げるので、現実に引き戻されてしまった。
ここからは“ライミング予備校”のコーナーだ。瓶底メガネの三浦大知が、教育実習生の高畑充希先生と視線を合わせるや否や、小田和正「ラブストーリーは突然に」のイントロが聴こえてきたりする(高畑の「ダーイチ」というセリフを含めて、世代を選ぶネタである)。KREVA先生は三浦大地『球体』に収録された「飛行船」を例に挙げてライミングを絶賛しつつ、今回で職を退くことを仄めかす。「終わりたくないオーワラナイ」を題材に感極まりながら授業を進めると、最後には無口な絢香が歌い、全員でKREVAに花(三浦は『球体』繋がりということでスイカ)をプレゼントするのだった。
そして「韻ストラクター」KREVAは、プレゼントされた花やスイカを、さながらMIDIコントローラー代わりに用いるユニークなシステムを紹介。花瓶に挿された花に触れると、それぞれに異なるシンセのコードが鳴り、バンドと協力して「花」を演奏しながら三浦大知“飛行船”をカバーするという趣向だ。三浦の『球体』の前衛性に対する、リスペクトを込めたアンサーのように見えた。
この後にステージを任された三浦大知は、ダンサー陣と共に華麗なステップやスピンを交えながら、「Cry & Fight」や「(RE)PLAY」といった近作曲を熱唱。ついさっきまでコントのような寸劇の三枚目役を引き受けていたのに、スーパースターのオーラが溢れている。KREVAの「飛行船」カバーに触れて「会うたびに愛を感じます」と告げると、KREVA「あえてそこ(攻め込む)」のカバーで果敢にラップに挑戦する。三浦とお揃いの衣装のKREVAもステージ上に飛び込んできて、歓喜の共演を果たしてしまった。互いにベストのパフォーマンスをもって、挑むように愛と理解を伝える。そんな2人の関係性が透かし見える思いがした。
さあ、満を持してのKREVAのステージは、いきなりの大合唱を巻き起こす“アグレッシ部”からスタートだ。「あらためて思うわ。俺はひとりじゃないんだってな!」と告げてからの“ひとりじゃないのよ”は、高畑充希とのデュエットでステージ狭しと駆けずり回る。ここで、辣腕バンドのメンバーである柿崎洋一郎(Key)、近田潔人(G)、熊井吾郎 (DJ&MPC)、白根佳尚 (Dr)、バンマス岡雄三 (B)を1人ずつ丁寧に説明し、「俺の好きは狭い」はむしろ“好き”だけが詰め込まれた『908 FES』のスペシャルな空間を引き立てていた。
しかし、フェスの限られた持ち時間の中では、演奏できる楽曲も多くはない。<なんだかんだメドレーすれば 実際やっぱり楽しめた>というフレーズで歓声を誘い、怒涛のメドレーへと持ち込むKREVAである。「Have a nice day!」のわずか数小節のコール&レスポンスとハンドウェーブ、そして「C’mon, Let’s go」でのバッキングなしの速射砲ラップと、それぞれ一瞬芸のように名曲を繋いでいった。めくるめくパフォーマンスを支えるバンドもすごい。そして「これが噂の、ふたつの意味で『イッサイガッサイ』〜っっ!!」とフィニッシュするのだった。本編の最後は、尾崎裕哉、JQ、三浦大知、KREVA、高畑充希、絢香が横一線に並んで歌声が折り重なる「音色」だ。
こんなふうに音が、声が、深いところで響きあうフェスは、『908 FES』の他にあるだろうか。アンコールは、場内全点灯で「Na Na Na」の大合唱。そして三浦大知のダンサー陣も含め、この日の出演者が勢揃いし挨拶する。去り際、KREVAは「次に会うときまで、みんな元気で。いや! 健康で!」と“健康”のサビ部分を詰め込み、贅沢極まりない音楽の一夜を締め括った。
9月1日の武道館では、KICK THE CAN CREWのワンマン『現地集合』が繰り広げられる。また9月8日には、Zepp Osaka Baysideで『クレバの日 スペシャルライブ〜大阪編〜』が開催される予定だ。
【セットリスト】
■KREVA
1.存在感
2.全速力 feat. 三浦大知
3.蜃気楼 feat. 三浦大知
■尾崎裕哉
4.Glory Days
5.想像の向こうfeat. KREVA
■JQ from Nulbarich
6.ain’t on the map yet
7.NEW ERA
8.Stay The way feat. KREVA
■高畑充希
9.くればいいのに feat. 高畑充希
10.木蓮の涙
■絢香
11.にじいろ
12.ハートアップ feat. 三浦大知
13.Glory feat. KREVA
14.The beginning
■ライミング予備校
15.卒業
16.終わりたくないオーワラナイ
■KREVA
17.飛行船
■三浦大知
18.Cry & Flight
19.(RE)PLAY
20.FEVER
21.あえてそこ(攻め込む)
22.EXCITE
23.Be Myself
■KREVA
24.アグレッシ部
25.ひとりじゃないのよ feat. 高畑充希
26.俺の好きは狭い
27.908 fes Medley
イッサイガッサイ~パーティはIZUKO?~基準〜ストロングスタイル~OH YEAH~Have a nice day!〜C’mon, Let’s go~KILA KILA~成功~かも〜王者の休日~イッサイガッサイ
28.音色
<アンコール>
1.Na Na Na
ミニアルバム『存在感』
発売中
【初回限定盤】(CD+DVD)
VIZL-1414/¥2,300+税
※デジパック仕様
【通常盤】(CD)
VICL-65035/¥1,500+税
<収録曲>
■CD
1.INTRO
2.存在感
3.俺の好きは狭い
4.健康
5.百人一瞬
■DVD
1.「存在感」MV
2.「存在感」メイキング
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