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DEAD ENDのメジャーデビュー作『GHOST OF ROMANCE』で不世出のギタリスト、足立“YOU”祐二の非凡なプレイを堪能

すでにご存知の方がほとんどだろうが、DEAD ENDのギタリスト足立“YOU”祐二が、6月16日に敗血症のため死去した。享年56。あまりにも早すぎる逝去である。本当に残念でならない。今週は彼を偲んでDEAD ENDの作品をチョイスしてみることにした。しかしながら、DEAD ENDの名盤は2014年に『ZERO』を取り上げているので、今回はギタリスト、YOUのデビューまでの足跡を辿る意味でも、インディーズ作品の『DEAD LINE』と、彼がDEAD END以前に在籍していたTERRA ROSAの音源の話も挟みつつ、メジャーデビュー作『GHOST OF ROMANCE』を聴き直してみた。

■『ZERO』/DEAD END
https://okmusic.jp/news/63832

■掛け持ちでDEAD ENDに参加

足立“YOU”祐二(以下YOU)のメジャーデビューは1987年。DEAD ENDのギタリストとして…のデビューであった。DEAD END自体はMORRIE (Vo)、“CRAZY”COOL- JOE(Ba)が中心となって1984年の暮れに結成されたので、YOUはあとからバンドに加入したことになる。1986年に前任のギタリストが脱退することになり、そのあとを引き受けて加入したというが、その時点でYOUはTERRA ROSAに在籍しており、バンドを掛け持ちするかたちでの参加であったという。細美武士や日向秀和、川谷絵音らの例を挙げるまでもなく、今ではバンドの掛け持ちも珍しいものではなくなったけれど、1980年当時、少なくとも表立ったかたちでのダブルワークというのはそうそうあることではなかったのではなかろうか。その事実そのものがYOUというギタリストの非凡さを示しているように思う。

伝え聞くところによると、そのメンバーチェンジもなかなか異例だったようだ。前ギタリスト脱退は全国ツアーの直後。しかも、それはDEAD ENDがインディーズでリリースした1stアルバム『DEAD LINE』(1986年)のレコーディング完了前でもあったという。バッキングのギターは大半を取り終えていたというが、ギターソロはほとんどが手付かずのまま。全8曲中7曲は脱退した前ギタリストが作曲したものである。そんな状態で脱退しなければならなかったというのは断腸の思いであったことだろうし、そこでの精神状態は如何ばかりだったであろうかと慮られるところではあるけれども、あとを任せられたメンバーも筆舌に尽くし難い状況であったことだろう。修羅場というよりは、ほぼ愁嘆場だったと言ってよかろう。そんな状況下で、YOUは残っていたバッキング数曲と、ギターソロのほとんどを弾いた。彼の加入の経緯や、その後のレコーディング期間がどの程度あったのかは分からないが、件の全国ツアーが1986年3月から4月にかけてで、『DEAD LINE』の発売が同年6月30日であったという記録が残っているから、アルバムをプレスする期間を除けば、多く見積もって2カ月間、いや1カ月半といったところだったであろう。自分の作った曲であるならば不可能ではなかろうが、他人の作った曲で、しかもすでにほぼバッキングを取り終えたものの上に乗せるソロを短期間で考えてプレイするというのは、楽器を弾かない立場からしても凄まじいまでに困難な作業であることは想像できる。さらに言えば、インディーズの頃のDEAD ENDの音楽ジャンルは所謂HR/HMである。ギターソロは長めだし、速弾きもあるので、そこにソロを後乗せするなんて芸当はほとんど“曲芸か!?”って話である。YOUはそこをやり切った。

■非凡なプレイを早くから露呈

今回『DEAD LINE』を聴き返してみたら、確かにバッキングとソロとのトーンが明らかに異なる印象はあった。ノイジーでヘヴィなリフに比べると、間奏で聴かせる単音弾きは、何と言うか、音がパキッとしているというか、異なるプレイヤーが弾いている印象はある。ただ、そう思って聴かなければ気になるものではないだろうし、ツインギターのバンドではそういうことが当たり前なので大きく違和感はない。それよりもその流麗な旋律の方に耳が惹かれると思う。この時点ですでにYOUというギタリストの完成度の高さが十分にうかがえるのである。個人的に白眉だと思うのは「SPIDER IN THE BRAIN」。中盤のアルペジオからつながる、速弾きではあるものの、スケール感の大きい、奥行きのある演奏を聴かせるギターは、これより先、HR/HMの枠に留まらずどんどん進化を重ねていくDEAD ENDの原型がそこにあるようである。

話は前後するが、“それでは、DEAD END加入前、TERRA ROSA在籍中のYOUはどんなギタリストであったのか?”が少し気になって、TERRA ROSAの音源も軽くチェックしてみた。ちなみに当コラムでは昨年11月にTERRA ROSAを取り上げているのだが、そこで紹介した1st『The Endless Basis』(1987年)はYOU脱退後の作品。彼のプレイが聴けるということで、当コラム担当編集者が『Primal』を用意してくれた。これはTERRA ROSAのデモ音源を集めた作品で、全10曲の収録曲のうち、5曲をYOUがプレイしている。ここではそのひとつひとつを細かく解説はしないけれども、いずれもロックのギターらしい荒々しさを基調としつつも、イントロや間奏で聴かせる単音弾きの旋律はどれも美麗なものばかり。赤尾和重(Vo)の歌も伸びやかで広がりがあり、それでいて十分にメロディックなヴォイスパフォーマンスを見せているのだが、YOUのギターはそれと完全に拮抗している。歌とギターというふたつのメロディーが奏でるアンサンブルがTERRA ROSAというバンドの特徴であることがよく分かるのである(加えて言うと、その歌とギターに岡垣正志(Key)の鍵盤が重なることで、さらに複雑なバンドアンサンブルとなっていることもまたTERRA ROSAの特徴と言える)。『Primal』はデモ音源集だけあって音の粗さは如何ともし難いものの、YOUのプレイはそれを補って余りあるというか、プレイそのものはまったく見劣り(聴き劣り?)しないのである。

個人的には「Fridays Free Fair」が気に入った。HR/HMらしいリフものだが、自分のような半可通でも、そのビブラートやチョーキングは明らかにYOUのものだと認識できる。「Fridays Free Fair」は『The Endless Basis』にも収録されているので、せっかくの機会なので聴き比べてみた。『The Endless Basis』の時点でのギタリストには申し訳ないが、その躍動感は明らかにYOU版が上だと思う(三宅さん、ごめんなさい)。DEAD END以前もYOUはYOUのギターを弾いていたことがよく分かるテイクなので、生粋のファンはすでにチェック済かもしれないが、未体験の人には聴くことを強くオススメしたい。YOUがTERRA ROSAからDEAD ENDへ移籍するにあたっては、争奪戦が繰り広げられたとの噂も一部にはある。事の真偽はともかくとして、このプレイを目の当たりにすれば、それもさもありなんとは思う。今も『Primal』に残るYOUのプレイはそれほどまでに圧倒的だったのである。

■『The Endless Basis』/TERRA ROSA
https://okmusic.jp/news/364325

■のちの独自性を予見させるプレイも

さて、そんなYOUがDEAD END加入後の最初のアルバム『DEAD LINE』は(ていうか、DEAD ENDにとっても最初のアルバムだけど…)、楽曲そのものはそのほとんどが前任ギタリストの手掛けたものであったことは前述した通り。彼が本格的に自身の音楽性を公に示したのは『GHOST OF ROMANCE』(1987年)からである。全編のギターを担当しているのは当然として、全9曲中5曲の作曲も手掛けている。“水を得た魚”という表現でいいのかどうか分からないが、ここでのYOUのプレイは本当に活き活きしている。以前、誰だったかと話してて“YOUちゃんと言えば♪ギュイーン♪だよね”という話になったのだが、その言葉を借りれば、本作はのっけから♪ギュイン、ギュイン♪来ている。M1「DANCE MACABRE」のイントロはザラっとした音の如何にもHR/HM的なザクっとしたリフから始めるのだが、それもしっかりと(?)チョーキングが効いているのだ。アルバムのオープニングからYOUが弾いていることがありありと伝わってくる。イントロだけではなく、そのリフがAメロにもつながっていき、そこでもしっかりと♪ギュイーン♪と来る。しかも、ヴォーカルを邪魔しないような配慮だろうか。その自己主張とも言えるフレーズは歌と重ならない箇所に配されているところが心憎い。

続くM2「THE DAMNED THING」は♪ギュイーン♪が鳴りを潜めるものの、ザクザクとした印象的なリフは健在で、今度はそこにメロディアスな単音弾きが連なっていく。そのギターが奏でる旋律は実に叙情的で、これまた流麗な間奏のギターソロと併せて、YOUのメロディーセンスをうかがわせるに十分なプレイである。かと思えば、アウトロでは相当にフリーキーな弾き方をしているのもM2「THE DAMNED THING」の面白いところ。若干不協気味な響きも見せつつ、暴れまくっていて、アウトロ最終盤の他パートとのユニゾン箇所を鑑みると、この楽曲ではプログレを意識していたのかもしれない。また、M1、M2はMORRIEのパートがモノローグに近い…という表現でいいかどうか分からないが、歌っているというよりもシャウトや言葉をリズミカル発しているような箇所が多いので、少なくとも『GHOST OF ROMANCE』冒頭部分のメロディーはYOUが司っていると言ってもいいのではないかと思う。

M3「PHANTOM NATION」、M4「THE GODSEND」はともにMORRIE作曲のナンバー。それを意識すると、若干ギターが控えめな気もしてくるし、実際、M1、M2ほどに派手な印象はない感じだが、それでもチョーキングはもちろん、イントロや間奏でのアラビアンな音階など、聴きどころは少なくないし、楽曲の独特の空気感を醸成しているのはギターである。それは“CRAZY”COOL- JOE 作曲のM5「DECOY」も同様(ちなみにM5「DECOY」はアナログ盤には収録されておらず、CD盤のみの収録)。ベーシストが手掛けたナンバーらしくベースのリフから始まってそれが全体の推進力ともなっているナンバーだが、ストローク、単音弾きとギターの表情は多彩だ。特に単音弾きの旋律は、これもまた歌よりもその音階が耳に残るほどで、全体的にはギターがそれほど前に出ている印象はないものの、楽曲のアクセントとしてなくてはならないものとなっている。

M6「THE RED MOON CALLS INSANITY」はベーシックがR&Rで、なーんも考えないバンドが演奏したらMötley Crüeのコピーにでもなってしまいそうな雰囲気があるけれども、ギターのビブラートやチョーキング(=♪ギュイーン♪)と、ヴォーカルパフォーマンスがそこに陥らせていない。バンドとしての力量がはっきりと表れたナンバーと言える。ギターだけにポイントを絞れば、M4、M5のギターにはクリアトーンもあっただけに、「THE RED MOON CALLS INSANITY」は余計にワイルドに聴こえる印象もある。間奏のギターソロもわりとフリーキー。面白い感じで音が重なっていく様子にもやはりこのバンドの非凡さが出ているようにも思う。M7「DEAD MAN'S ROCK」はHR/HMらしいヘヴィかつ速いリフで始まるナンバー。これもまたアウトロでのサイバーな雰囲気が単なるHR/HMにしていないのだが、この辺は作曲者であるMORRIEの手腕が大きいのだろう。

ソリッドなギターサウンドで幕を開けるM8「SKELETON CIRCUS」は、そのリフがグラムロック~ニューロマ的というか、そこまで聴かせていたHR/HMものとは異なることに気付く。展開自体も所謂A、B、サビが分かりやすく配置されているので、「SKELETON CIRCUS」は本作の中で最もJ-ROCK的なナンバーと言えるかもしれない。また、間奏で聴こえてくるアルペジオは、のちに4th『ZERO』で確立するDEAD ENDらしさを予見させるものではあっただろう。メジャーキーではないが、どこか明るい(というか暗くない)印象のメロディーラインもそうだし、弾けるように進むギターソロもそうである。

アルバムのフィナーレを飾るM9「SONG OF A LUNATIC」は、「SKELETON CIRCUS」以上に、のちのDEAD ENDらしい楽曲と言えるだろう。ドライなギター。繊細な印象のコード。世界観はしっかりあるものの、だからと言って、その世界観はくっきりとしてない。具体的に言えば、ガシッとしたリフもなく、ディストーションも派手にかかっているわけではないが、それでもしっかりと世界観を作り上げている。このアンサンブルは明らかにビジュアル系シーン、ひいてはJ-ROCKシーンに多大なる影響を与えたものであろうし、DEAD ENDに続く世代にとってお手本のひとつとなったことは言うまでもなかろう。

我々は今この時点で、こののちに3rd『shámbara』、4th『ZERO』とアルバムが続いて、先ほど述べたようにDEAD ENDのサウンドが比類なきものにどんどん変化していくことが分かっているので、『GHOST OF ROMANCE』が過渡期の作品であると脊髄反射的に理解してしまいがちだ。しかし、こうして改めて同アルバムをギターに絞って聴き込んでみると、この時点でもYOUのプレイは相当に円熟していたことが分かるし、その多彩なプレイは彼の懐の深さを示すに十分であることもよく分かった。そのアーティスト性は他のメンバーとの化学変化を生み、後世のシーンに多大な影響を与えたことは前述した。YOUは間違いなく日本の音楽シーンを支えたギタリストのひとりであり、不世出のアーティスとは彼のような人物のことを言うのであろう。

TEXT:帆苅智之

アルバム『GHOST OF ROMANCE』

1987年発表作品



<収録曲>
1.DANCE MACABRE
2.THE DAMNED THING
3.PHANTOM NATION
4.THE GODSEND
5.DECOY
6.THE RED MOON CALLS INSANITY
7.DEAD MAN'S ROCK
8.SKELETON CIRCUS
9.SONG OF A LUNATIC



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