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グループ分裂直前の作品にもかかわらず傑作となったCCRの『ペンデュラム』

たった4〜5年の活動であったが、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(以下、CCR)はアメリカのロックファンに大きなインパクトを与えた。その衝撃は2019年の今でも続いているのではないだろうか。少なくとも彼らを生んだアメリカではそうだと僕は思う。特にジョン・フォガティのソングライティングは天才的で、アメリカポピュラー音楽のスタンダードとも言える名曲をいくつも送り出している。中でも「雨を見たかい(原題:Have You Ever Seen The Rain)」はアメリカはもちろん日本でもビッグヒットとなり、中年以上の洋楽ファンは今でもカラオケレパートリーの上位に上がっているはず。その「雨を見たかい」を収録しているのが、今回紹介する『ペンデュラム』だ。彼らにとって6作目となるこのアルバムは、彼らの代表作であるばかりか、ブルース、カントリー、ロカビリー、R&Bなどに影響を受けながらも独自の感性で再構築、CCRならではのルーツロックを提示している。収められた10曲はどれも珠玉のナンバーで、このアルバムが「雨を見たかい」だけじゃないことがよく分かる傑作である。

■60年代後半のサンフランシスコ音楽事情

彼らが“クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル”という奇妙な名前でデビューしたのは、1968年のサンフランシスコ。この頃のサンフランシスコと言えば、ベトナム戦争反対、公民権運動、マリファナ、そしてヒッピーとフラワージェネレーションなどが全盛の時代である。ロックではグレイトフル・デッド、ジェファーソン・エアプレイン、クイックシルバー・メッセンジャーサービス、サンタナ、モビー・グレープ、ジャニス・ジョプリンらに大きな注目が集まっていた。ロックと麻薬は密接に関連し、ライトショーを用いた3時間を超す長尺のライヴやフェスが盛んに行なわれていた。

■異形のサウンドをもったグループ

前述したようなシスコ周辺のグループは、サイケデリックロックとかアシッドロックと呼ばれていたのだが、その中にあって他のグループとはまったく違う音楽性を持っていたのがCCRであった。なぜ、彼らの音楽が他と違っていたのかと言うと、それは彼らがシスコの誰よりも古くからグループとして活動していたのが大きな理由だろう。

CCRはトムとジョンのフォガティ兄弟(ともにギターと歌)、スチュ・クック(ベース)、ダグ・クリフォード(ドラム)の4人組で、1961〜1962年にはブルー・ヴェルヴェッツ名義でインディーズレーベルから数枚のシングルをリリースしている。1959年のグループ結成当初はベンチャーズに憧れ、インスト曲を中心に演奏していたようだ。すでにロックンロールやロカビリーは世に出ており、若いフォガティ兄弟も例外なくロックンロールの洗礼を受ける。リトル・リチャード、ボ・ディドリー、チャック・ベリー、エルビス・プレスリー、カール・パーキンスらに大きな影響を受けた彼らは言わば筋金入りのロックンローラーであり、他のシスコのグループのようにフォークやカントリーブルースをバックボーンにしたアーティストと比べ、かなり音楽性が違っていたのだ。

■修行中のゴリウォッグス時代

1964年、新興ジャズレーベルのファンタジーと契約し、グループ名をゴリウォッグスに変えシングルを数枚リリースするものの売れなかった。売れなかったのは、彼らの所属していたレーベルがジャズ専門であったことが大きい。他のシスコのグループはポピュラー音楽専門のレーベルだったので、レーベル自体が売り方を心得ていたし、曲のアレンジにしてもプロデューサーが時流に合った指導をしていたわけだが、ファンタジーはそのへんのノウハウがまだなく、宣伝力もプロデュース力も弱かった。ただ、ジョン・フォガティはグループの運営と自分のヴォーカルには自信を持っていたので、徐々にリーダーとしての頭角を現すことになる。まだグループの音楽性はR&Bやロカビリーであったが、ビートルズやストーンズらに触発されジョンはソングライティングとヴォーカルの腕を磨いていく。

■CCRのデビュー

1968年、彼らはゴリウォッグスからクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルに改名、ジェファーソン・エアプレインやクイックシルバー・メッセンジャー・サービスら他のシスコのグループと同じようにサイケデリックなネーミングとした。デビューアルバムの『スージーQ(原題:Creedence Clearwater Revival)』(‘68)はサイケデリックな部分のあるロカビリー・R&Bグループといった風情であるが、すでにジョン・フォガティの黒っぽくシャウトするヴォーカルは完成されており、他の西海岸のグループを圧倒していた。カントリーソウルの有名アーティスト、デイル・ホーキンスの「スージーQ」のカバーが全米チャート11位となり、彼らの名前は全米で広く知られるようになる。

■年3枚という驚異的なペースでの アルバムリリース

翌69年はCCRの破竹の活躍が始まる年である。まずは1月に2ndアルバム『バイユー・カントリー』をリリース、このアルバムに収録されたジョン・フォガティのオリジナル「プラウド・メアリー」が全米2位、全英8位と大ヒット、アルバムもその追い風を受けて7位まで上昇する。アルバムはロックンロールとR&Bスタイルが中心ではあるが、「プラウド・メアリー」は明らかにカントリーソウルのテイストを持っており、南部っぽくはあるがCCR独自のダウントゥアースなロックに仕上がっている。ご存知の通り、この曲は今では白人黒人を問わず取り上げるアメリカンポップスのスタンダードだ。

そして、同年8月には3rdアルバム『グリーン・リヴァー』がリリースされ、シングルカットされた「グリーン・リヴァー」(全米2位、全英19位)と「バッド・ムーン・ライジング」(全米2位、全英1位)が世界的に大ヒットする。また「ロート・ア・ソング・フォー・エブリワン」と「ロディ」の名曲2曲は彼らにとって最初のカントリーロック作品である。ジャケットはこれまでのサイケデリックなイメージを払拭し、収録されたアーシーなサウンド(R&B、ロカビリー&カントリーロック)をそのまま表したかのようである。3作目にして、満足できる自分たちの音楽を創造した瞬間であろう。アルバムは初の全米1位を獲得している。

同年11月には4thアルバム『ウィリー&ザ・プアボーイズ』をリリース、この作品からもジョン・フォガティ作「ダウン・オン・ザ・コーナー」(全米3位)が大ヒット、他にもジャグバンド風のインスト「プアボーイ・シャッフル」やレッドベリーのカバーも収録するなど、名曲揃いのアルバムとなった。ブリティッシュロックの香りがする名曲「エフィジィ」はジョンの新たな試みである。

■西海岸から発信する泥臭いサウンド

ジョン・フォガティのオリジナル曲はシンプルな構成なのにメロディーが美しく、ブリル・ビルディング系のソングライターにも匹敵するほどの才能を感じたものである。CCRの音楽は南部風ロックというよりは、マーク・ジェイムスやジョー・サウスといったカントリーソウルのシンガーソングライターに近い存在なのではないかと僕は思っている。本来はポップスに限りなく近いロックでにもかかわらず、ジョンの声がソウルフルなだけにロック寄りに扱われるのではないだろうか。

1970年7月、5thアルバム『コスモズ・ファクトリー』では収録曲11曲のうちオリジナルは8曲。このアルバムから大ヒットしたのは「トラヴェリン・バンド」(最高5位)「アップ・アラウンド・ザ・ベンド」(最高2位)「ルッキン・アウト・マイ・バック・ドア」(最高1位)で、カップリングの「フール・ストップ・ザ・レイン」「ジャングルを越えて」「光ある限り」もヒットするので、オリジナルの8曲中、6曲がヒットしたことになる。アルバムは2回目の全米1位を獲得。このアルバムではCCRの原点とも言えるロックンロールとロカビリーに重点を置き、その目論見は成功したと言えるだろう。サザンソウル風の「光ある限り」(名曲!)では、オーティス・レディングを思わせるようなジョンの魂のこもったヴォーカルが聴ける。

■本作『ペンデュラム』について

そして、同年12月にリリースされたのが『ペンデュラム』だ。ヒット曲が増えるとツアーに明け暮れる生活が続き、疲労感が募っていく。四六時中顔を合わせるメンバー間に軋轢が生じるという人気ロックバンドなら誰しもが経験することだが、完全主義で独裁的なジョンのやり方についていけなくなったのは、他でもない兄のトムであった。彼は本作のレコーディングを最後にグループを脱退することになるのだが、それはまた微妙なバランスで成り立っていたグループの崩壊を呼ぶことになる。そんな緊張関係にあったCCRであったからか、本作はこれまでのような楽しさはあまり感じられず、クールさが前面に出ている。しかし、メンバー間の緊張感は彼らの音楽を間違いなくワンランク上げた。

これまでのアルバムには必ずカバー曲が収められていたが、本作は全てジョンのオリジナルで、どれもが優れた楽曲に仕上がっている。また、当時ジョンはブッカー・T&ザ・MGズの音作りに影響されており、本作ではヴォーカル、ギターのほか、オルガン、サックス、エレクトリック・ピアノ、パーカッションまで手掛けている。特にサックスとオルガンは本職並みの巧さで、CCRの印象が変わってしまうぐらい分厚い音作りになっている。

クックのベースとクリフォードのドラムは、いつものリズムキープだけでなく、これまでにないほどの音数を駆使しているのだが、絶妙のグルーブ感とタイトさでリスナーを惹き付ける。収録曲は全部で10曲、1曲目の6分半に及ぶファンキーな大作「ペイガン・ベイビー」、日本人が大好きな「雨を見たかい」、エレピやサックスを駆使したロックンロール・ナンバー「カメレオン」「モリーナ」、MGズをイメージしたファンキーな「ボーン・トゥ・ムーブ」、ビートルズ風メロディーの「ヘイ・トゥナイト」、プロコルハルムの「青い影」を思わせる美しい「イッツ・ジャスト・ア・ソート」、アルバムの最後を飾る美しくサイケデリックなインスト「手荒い覚醒(原題:Rude Awakening)」(意味は“嫌な予感”…意味深なタイトル)など、どれもが名演であり名曲である。

本作は、CCRファンの間でもあまり受けの良くないアルバムだと言われるが、僕は全く逆の意見で、本作こそ成熟したCCRが味わえる最高のアルバムだと考えている。彼らの作品で本作ほどよく聴いた作品はない。ただし最後の「手荒い覚醒」は、後半プログレというか現代音楽のような展開になるので飛ばすことは多いが…。

TEXT:河崎直人

アルバム『Pendulum』

1970年発表作品



<収録曲>
1. ペイガン・ベイビー/Pagan Baby
2. 水兵の嘆き/Sailor's Lament
3. カメレオン/Chameleon
4. 雨を見たかい/Have You Ever Seen The Rain
5. ハイダウェイ/(Wish I Could) Hideaway
6. ボーン・トゥ・ムーヴ/Born To Move
7. ヘイ・トゥナイト/Hey Tonight
8. イッツ・ジャスト・ア・ソート/It's Just A Thought
9. モリーナ/Molina
10. 手荒い覚醒/Rude Awakening #2




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