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今や海外でも活躍するFLOWのバンドとして本質が詰まった『GAME』

2019年1月30日。FLOWが10年振りの日本武道館公演『FLOW LIVE BEST 2019 in日本武道館~神祭り~』が開催される(本コラムが公開された時間と開演時間とが同時くらいだろうか)。極めて異例と思える長期タームを経て、再び武道館でワンマンライヴを行なえるというのは、即ち彼らのポテンシャルの高さと言っていいと思う。メジャーデビュー作『GAME』からそのバンドとしての本質を検証してみたい。

■パンク日本らしい抑揚を注入

FLOWと言えば、今やアニソンバンドとして世界的にその名を知られる存在であることはみなさんもご承知だろうが、古いリスナーである筆者にとっては、海援隊の「贈る言葉」のカバー曲(2003年)の印象が強い。まずそこからFLOWを語ってみようと思う。

エッジの立ったギターサウンドと性急なリズムとで既発曲を演奏する。これがパンクのカバーの基本であり、それこそSid Viciousによる「My Way」(原曲:Frank Sinatra)など、パンクの黎明期からある手法だし、Hi-STANDARDもさまざまなロック、ポップスをカバーしている。パンクにおいてカバーは当たり前というか、カバーしてこそのパンクといった雰囲気すらあるが、FLOWがあの当時、誰もが知っているフォークソングをパンクにしたことは、実はかなり斬新なことだったのではないかと思う。少し大袈裟な言い方をすると、それは今、彼らが世界的なアニソンバンドとなったことと決して無縁ではなかったのではないかとさえ思うのだ。

筆者はそれほどアニソンに明るくないので半可通なりの分析であることをご承知願いたいが、アニソンが海外で受けるのは歌の抑揚が日本ならではのもので、それが日本以外の方々には新鮮に聴こえるからなのだという。A→B→サビという展開もそうで、“Bメロで溜めてサビで開放!”みたいなものは欧米ではほとんどないと聞く。おそらく“サビ頭”という概念もないだろうから、いきなりキャッチーなメロディーから始まり、A、Bを経てまたサビという構成も海外の人にとっては目新しいものなのだろう。

もっとも、原曲である海援隊の「贈る言葉」は明確にA、B、サビが分かれた構成ではなく、A→B→A´という感じで、上記アニソンの定義に則した感じでもないのだが、FLOWバージョンはご丁寧にサビを頭に足して、しかもそこはリズムレス。Aからバンドサウンドが入るものの、Bでリズムパターンを変化させたりとメリハリを強調している。単にサウンドを荒々しくしたというものではなく、日本らしい歌の抑揚と楽曲構成を何の衒いもなくやっているようにも見える。

メジャーデビュー前後のFLOWは“青春パンク”バンドのひとつとして語られていた。“青春パンク”とは曖昧なジャンルだったが、[1990年代後半頃から起こったメロコアブームやフォークソング・リバイバルを背景としている。]というから([]はWikipediaから引用)、海援隊をカバーしたFLOWがそこに入れられたことは理解できなくもない。だが、そうしたジャンル分けで矮小化するよりも、FLOWの音楽はパンクに日本らしさを導入したハイブリッドなものと見るほうが前向きでいいのではないかと思うし、だからこそ、彼らは世界的なアニソンバンドと成り得たと考える。

若干話が脱線するが、Wikipediaを見ていたら、[2003年の終わり頃からブームは沈静化し、同年より台頭してきたミクスチャーロックバンドや下北系ギターロックバンドに取って代わられるようになる。そのため前述のロードオブメジャーやFLOWなど、新たな方向性を模索するバンドも多く現れた。]([]はWikipediaから引用)とあった。しかし、事ここに至っては、セールスプロモーション的な方向性はともかくとして、“青春パンク”が下火なったからと言って、FLOWがその音楽的方向性を変えることがなかったことは間違いない。そこは訂正したほうがいいのではないかと思う(ロードオブメジャーのことはよく分からないけど…)。

■ツインヴォーカルとギターの多彩さ

さて、『GAME』である。今回、それこそほぼ15年振りに聴いたのだが、どの楽曲にも前述したメロディーの抑揚とメリハリの効いた構成を見出せる作品であることが確認できた。

アニメ『NARUTO -ナルト-』第4期オープニングテーマとなったM1「GO!!!」は、《険しい修羅の道の中》や《失うモノなんてないさ いざ参ろう!》、あるいは《音を立てず忍び寄る影》や《かざした鋭い刀》という歌詞からすると、おそらくアニメのテーマ曲となる前提で作られたものではあろうが、そのキャッチーさは仮にタイアップがなくとも十分に受け入れられたと思わせる秀逸さ。この他にもM3「流星」とM5「太陽」がテレビ番組のエンディングテーマとなったそうだが、今聴いてもそのポピュラリティーの高さはテレビ向きと思える。

随所でラップが聴けるのは2000年代のバンドらしいというか、KOHSHI(Vo)とKEIGO(Vo)とのツインヴォーカルであるFLOWらしさなのかもしれないが、この辺も楽曲のメリハリ──楽曲のポップさと言い換えてもいいと思う──を際立たせていると思われる。メジャーデビューシングルでもあるM2「ブラスター」はAもサビも清涼感すら感じさせるメロディーで、それをマイナーで攻撃な印象もあるBメロのラップで挟むことで、サビに到着した時にそのさわやかさを増大させているかのようでもある。スイカに塩をかけるような感じというか、チョコミント的というか、どちらも比喩としては間違っているような気もするが、何となくニュアンスは分かってもらえると思う。

ラップはこの他にもM1「GO!!! 」をはじめ、M4「Without you」、M5「太陽」、M9「集中治療室 -I.C.U-」などにもあり、いずれもM2「ブラスター」同様の効果を生んでいるが、この辺から察するにFLOWはポップさを作ることに関しては器用なバンドだと言える。それはギターサウンドにも表れていると思う。時に歌を下支えしながらも、時に前面に出るような自己主張も忘れない、ギターの多彩さも随所で確認できる。

まず、ギターによるメロディーが際立ったものから挙げると、これも多々あるが、個人的にはその最たるものとしてM11「その先には…」のイントロを推したい。BOØWY辺りから続く正調なるビートロックのイントロと言った印象で、彼らが単なるパンクバンドでも流行のミクスチャーに飛び付いたバンドでもないことを示す好材料と言える。開放感と疾走感を併せ持ったコード感がとてもいい。M11「その先には…」ほどには目立たないかもしれないが、M7「ノスタルジア」もいい。間奏のギターは流麗でありつつ、しっかりとブルースフィーリングを感じさせる素晴らしいテイクで、堅実なイメージのギターリフと併せて、TAKE(Gu)のギタリストとしての確かな手腕を確認できるナンバーだと思う。

イントロやギターソロだけでなく、バッキングを務める所謂サイドギターにおいても──いや、むしろそこにおいてこそ、FLOWのギターの多彩さが発揮されていると思う。M5「太陽」のセカンドライン。M6「Surprise」やM12「ドリームエクスプレス」のスカ。M8「シャリララ」でのボサノヴァ。さらには(これはギターで出しているものかどうか確証がないが)M3「流星」の全編に重なる電子音みたいな音であったり、M9「集中治療室 -I.C.U-」で聴こえるスクラッチノイズ風の音であったりも、楽曲の十分すぎるアクセントとなっており、このバンドの確かなクオリティーを発揮していると感じるところではある。無論こうした多彩なサウンドは確かなリズム隊が備わっているからできることであるのは言うまでもなく、GOT'S(Ba)、IWASAKI(Dr)の存在感がこのバンドにおいてかなりのウエイトを占めていることも補足しておきたい。

■前向きな歌詞とhideへの敬愛

《Oh 地図を広げ行こう/まだ見ぬ未来を目指して高鳴る胸焦がす》(M2「ブラスター」)。
《夢へと向かい 旅立つ僕に「がんばってね」と一言》《夢へと続く長い月日を がむしゃらに走りながら》(M3「流星」)。
《人ひとりじゃ出来ない事ばかり 出来る事それぞれ持ち合えば/やってやれない事はないさ 一歩前へ踏み出せよ!》(M4「Without you」)。
《とてつもなく激しい北風に 叫ぶ声かき消されて/それでも歌い続けてる この思いが昇る朝日に届くまで》(M8「シャリララ」)。
《その視線の先には必ず 僕らが進むべき道があるはず》《その視線の先には必ず 僕らが進むべき道が続いてく》(M11「その先には…」)。
《走れ 走れ オレ達を乗せて/星の彼方へ向かって/進め 進め とどまる事なく/つないだその手離さずに行こう》(M12「ドリームエクスプレス」)。
《流した涙の数だけ 僕らは強くなれるよ/眩い光を胸に ここから歩き出そう/僕たちのこの世界が 暗闇に覆われても/手を取り 愛の歌を 歌っていこう》《かけがえのない今を 共に歩き出そう…》(M13「Hands」)。

もしかするとこれは言うまでもないことなのかもしれないが、『GAME』収録曲の歌詞は前向きなものばかりだ。“未来”“夢”“一歩前”“朝日”“星”“光”“愛”…チョイスされた言葉からしてポジティブな匂いをさせている。英語詞もなくはないが、基本は日本語なので、歌詞には現在FLOWが海外のリスナーからも支持されている要因は見い出せないけれども、こと日本国内においては聴き手を選ばないというか、汎用性が高いということは言えるだろう。メロディもサウンドもポップなので、変に捻ることなく、こうした前向きなのものにしたほうが良かったと思うし、メンバーのキャラクターにも合っていると思う。

そんな歌詞の中から最も注目すべきものを挙げるとするならば、M6「Surprise」だろうか。

《そうね だいたい 同じ毎日/繰り返してく戯れ/それなりに楽しんでる》《通い慣れてる道の途中で/なんとなく 空 見上げ/気づけば ため息ついてる》《HEY BOY! スピード上げて/HEY GIRL! 見つけた未来へ/YEAH 小さなキッカケが Big Surprise》《何千何万の星が キミを彩る/OH! YES!!! 飛び立とう We can do it now!》(M6「Surprise」)。

KOHSHIとTAKEとが中学生の時、代々木競技場第一体育館でのhideのライヴへ行ってステージに挙げられたというエピソードがあることはFLOWファンの多くが知っていると思うし(この映像はhideのライヴビデオにも映っているという)、よしんばそれを知らなかったとしても、上記の歌詞がhide with Spread Beaverの「ROCKET DIVE」のオマージュであることは分かるだろう。ちなみにTAKEはその時に観たステージからの景色があまりにもすごくて、ライヴアーティストになることを決意したそうである。言葉の引用も含めて、リスペクトするアーティストのことを、これまた何の衒いもなく出せる潔さもFLOWのいいところではあると思う。

TEXT:帆苅智之

アルバム『GAME』

2004年発表作品



<収録曲>
1.GO!!!
2.ブラスター
3.流星
4.Without you
5.太陽
6.Surprise
7.ノスタルジア
8.シャリララ
9.集中治療室 -I.C.U-
10.MC2=E
11.その先には…
12.ドリームエクスプレス
13.Hands



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