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UEBO、3カ月連続定期ライヴの狙いとJ-POPシーンへの意気込みを語る

今年5月に1stミニアルバム『UEBO』をリリース。そして7月にはTSUTAYA O-nestでのワンマンライヴを成功させた、新進気鋭のシンガーソングライターUEBO。現在、3カ月連続定期ライヴを展開中の彼が、その狙いと音楽シーンへの意気込みを語った。

今後の方向性を自分なりに凝縮させるための

実験の場みたいな部分もある

──『UEBO 3ヶ月連続定期ライブ Vol.3〜混ぜるぜ危険〜』の開催が11月11日に迫っていますが、そもそも今回の3ヶ月連続定期ライブはどういう意図で企画されものなんでしょうか?

「プロデューサーにベーシストの根岸孝旨さんをお迎えして5月にリリースした1stミニアルバム『UEBO』は“ポップスを作りたい”という志のもとで作って、7月にワンマンライヴを行なったんですが、そこでひとつかたちが見えたと思ったんです。『UEBO』は6曲収録ながら風呂敷を広げ切ったところもあったので、ここからもっと出口を狭く…ホースの先を絞って水を遠くまで飛ばすようなイメージで、次はギュッとひとつの出口に凝縮するようなアプローチができないかなと思ったんですよね。ポップセンスだったり、R&B的な部分だったり、ブルース、ロック…今後アプローチは統一されていくと思うんですけど、そのひとつの中にギュッと凝縮するようなサウンドを探したくて、自主的に3ヶ月連続定期ライブを始めたんです」

──具体的にはどんな方法をとったのでしょう?

「1回目はベーシストと僕とのデュオでやって、2回目はドラムとのデュオでやりました。ドラムと言ってもシンセベースを操りながらドラムも叩く中村 皓さんという方と一緒にやらせてもらったんですが、とても面白いサウンドで、ふたりで5人分の音を出すみたいなことをやったりしました。これまで2回やったんですけど、この3ヶ月連続ライブが今後の方向性を自分なりに凝縮させるための、ある種、実験の場みたいな部分もありますね」

──もともとUEBOさんは弾き語りスタイルでライブ活動を始めたんですよね。再び初期に近いスタイルに戻ったような感じでしょうか?

「いや、初期に戻ったというよりも…脱皮なのかな? 自分の中では“脱皮して行かなきゃ”と思っているんです。そういうことも含めて3回目につながっていくと思うんですけどね。1回目、2回目ともに本当に実験という感じで、確信に基づいてやっていたのではなく、1回目は “ベーシストとふたりでやったらどうなるかな?”、2回目は“シンセベース+ドラムとやったらどうなるか?”くらいのスタートだったんですよ。3回目はトラックメイカーとふたりでやるんですけど、その方がベースの音だったりドラムのサウンドであったり、たまにサンプリングがあったりを出して、僕のアコースティックギターやエレキギターと合わせてやっていくんです」

──なるほど。つまり、この3ヶ月連続定期ライブは、バンドでもなく、弾き語りでもない、UEBOさんにとって新しいスタイルを探す場なんですね?

「そうです。ヒップホップバンドをやられている、クロダセイイチさんという方と一緒にやるんですけど、そういう方と出会いながら模索していくということですね。僕はジョン・メイヤーという、わりとアコースティックな音を出すシンガーソングライターが好きで、そこから音楽をスタートしてて。ジェイソン・ムラーズも好きだったりして、オーガニックなアプローチからシンガーソングライターへ入っていったんですけど、音楽はジャンルを問わず聴くことが好きで、最近のトレンドの中で自分がピンと来るものもあって。エレクトロっぽいものも好きなので『UEBO』の「Rainy」という曲ではそっちに接近しているんですけど」

──1stミニアルバム『UEBO』は6曲収録ながらとてもバラエティー豊かな作品で、「Rainy」では同期を取り入れてますよね?

「ええ。しっかり打ち込みで作り込んでいます。11月11日のライヴではトラックメイカーのクロダセイイチさんとふたりでやるんですけど、自分が“今後はこうしたい”と思うサウンドに近付くかなと思います。無機質なビートと、有機的に僕が歌ってギターを弾いて、たまにサックスも入る。場合によっては、トラックメイカー、僕、ドラムという編成でもいいと思うし、そういうふうにあまりスタイルに囚われない感じというか、“シンガーソングライターがバンドを背負いました!”というのではない見せ方ができないかなと思っているんですよ」

J-POP王道のサウンドを目指しても“ワンオブゼム”

そのバリエーションのひとつにしかなれない

──自主企画ライブはまさに挑戦でもあるし、自らのスタイルを生の現場で開拓していくような感じなんですね。アコースティック基調だった人がバンドサウンドでライブをやることも十分チャレンジではあると思うんですけど、それに甘んじないUEBOさんは前向きな方ですね。

「そんなこともないんですけど(苦笑)。以前から僕は自分でアレンジするのも好きで、打ち込みを使ったり、知り合ったミュージシャンに頼んで出てもらったりして、それらをバックに自分はギターをガンガン弾いたりしていたんです。ただ、それだけだと“この延長線上にあんまり新しいものが見えないな”って感じて。今は時代的にも、みんなが当たり前に聴くテレビから流れている国民的な曲みたいなものは、以前より少ない気がするんです。なくはないけど、少ない。そうなると、以前より自分が信じているものだったり、自分が好きなものだったり、自分の内面を掘っていくことで逆に突き出ていって、その人の立ち位置ができてい…そんな時代になっているなと感じているんです。現場にいたり、Spotifyで音源を聴いたりしている中でひしひしと感じていて」

──UEBOさん自身、トラディショナルものへのリスペクトはあるけれども、決してそこだけを追求していくタイプではないということでしょうか。

「トラディショナルなものは身体に染み込んでいるほど好きなんですよ。まさに今もその日その日で正解を出そうとしているけど、なかなか核心には至ってないのが現実ですね(苦笑)。もうちょっと突っ込んだ話をしてしまうと、“J-POPの王道を作ろう”というところがあるんです。『UEBO』で言うと「春の嵐」とかはまさに“J-POPの王道を今なりにやったらどうなるかな?”“俺が桜の歌を書いたらどうなるかな?”って、衝動と客観を刷り合わせながらやってたんですね。でも、よくよく考えてみたら、今、超王道のサザンオールスターズさんとかDREAMS COME TRUEさんにしたって、初めはオルタナティブだったんだなって思って。サザンさんの「勝手にシンドバッド」にしてもそうだし、ドリカムさんのサウンドにしても、やっぱりその当時になかったものであったり、当時の最新のものを取り込んでいたと思うんですよ。だから、J-POP王道のサウンドを目指しても、ワンオブゼムというか、そのバリエーションのひとつにしかなれない感じがすごいあると思うんです」

──そもそも“J-POPの王道”って掴みどころもないですしね。

「ええ。そう考えると、J-POPの王道として出てくる人で自分なりのサウンドがある人ってものすごいと思うんですよ。だから、僕も本当に好きなトラディショナルな部分がありながらもオルタナティブなものを作らないと思っていて。ひとつでもふたつでも他で見たことがないものを作らないと駄目だなと。それで自分自身もわくわくしたいですしね。だから、これからはこれまでやってきたものよりももっと趣味性の高いものになるかもしれない(笑)」

──なるほど。今回の3ヶ月連続定期ライブが、今話していただいたことのひとつでもあるという解釈でいいですか? 例えば、「春の嵐」は堂々としたメロディーを持った曲だと思うのですが、これを音源とは異なるアレンジで演奏することで、どんな化学変化が生まれて来るんだろうという興味がUEBOさん自身にもあるという。

「それはありますね。“これまで”もそうですし、“これから”=新しいものも出そうと思ってますし。あと、“これだと前と同じ感じになっちゃうから、こっちでやってみたらどうだろう?”っていうことの連続で、そういう現場でもありますね」

──観客の前でやることが前提ではあるのでしょうけど、やっているUEBOさん自身も楽しいライブだったりしますか?

「今回はそういうところがあると思います。そういう意味では初心に立ち返っているところがあるかもしれないですね」

取材:帆苅智之

ミニアルバム『UEBO』

2018年5月9日発売

※TOWER RECORDS 限定発売

MSE-0012/¥2,000

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