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11月3日は“レコードの日”! アナログ盤の祭典を彩るアーティスト5選

ご案内の通り11月3日は“文化の日”なので、『博多・天神落語まつり』『ゴジラ・フェス 2018』など、全国各地で催し物が目白押しなわけですが、実はこの日は日本レコード協会によって定められた“レコードの日”でもあります。アナログ盤のプレスメーカーである東洋化成株式会社は、2015年から毎年11月3日にアーティストの貴重なレコードのリリースやインストアライヴなどを実施し、レコードの普及に務めているのです。今回はイベントに先駆け、100を超える参加アーティストの中から5組を紹介します。ネットの海にダイブしてレコメンドアーティストの葉脈をなぞる果てのない旅もいいですが、埃や熱や水を避けてそっと針を落とす幸福な孤独を堪能する贅沢も乙なものです。

■「ボーイズ&ガールズ」(’18) /ASIAN KUNG-FU GENERATION

9月にCDシングルでリリースされたASIAN KUNG-FU GENERATIONの「ボーイズ&ガールズ」がアナログ盤に。歌い始め間際の短いブレスからひと言もこぼれ落とさないように紡がれるシンプルな歌詞は寛容性と包容力にあふれ、些細なことで永遠に分断されかねない世界に明かりを灯します。曲調はミドルテンポのバラードながら、扇情的なギターのエフェクトや滑らかにフェードインとアウトを繰り返すベース、タイトに粒立つドラムのシンバルに至るまで、輪郭の深さを保ちつつも角の取れた立体感が共存・共生する音作りの妙。プレイやリリック、作曲、レコーディング、ミックスの全てが、精緻な“調和”の穏やかさと美しさで磨かれています。

■「満月の夕<96 FROZEN BRASS VERSION>」(’96) /ソウル・フラワー・ユニオン

ソウル・フラワー・ユニオンがリリースした結成25周年の記念盤『DANCE HITS 1993-1995』。1993年から1995年に発表したダンスチューンを収録する同作には、阪神淡路大震災発生時の光景をテーマにした「満月の夕」のシングルバージョンも選出されています。 この“96 FROZEN BRASS VERSION”には梅津和時らジャズの大御所が名バイブレーヤーとして参加。土着的なチンドンの太鼓や鐘、三線の音色を、祈りが織り込まれた歌詞と声が肉付けし、瓦礫の匂いの混じった向かい風を象るようなチューバやクラリネット、サックスの呼気が彩色していきます。こぼれ落ちそうな金色の満月だけが照らす被災地の夜、人々の息と足音、鼓動だけが確かな音だった時間を、ひとつの音楽として切り取った一曲です。

■「Ticket gate」(’18)/Frasco

タカノシンヤ、峰らるを中心とした“メタポッププロジェクト”Frascoの1stアルバムならぬ“シンバム”『REM』より、収録曲の「Ticket gate」を。レゲエ調ながらグルーブではなくループフレーズでゲシュタルト崩壊を招くベースライン、伸縮しながら十重二十重に展開されるパーカッシブなシンセサイザーのつづれ織りで構成された緻密なトラック、それらに負けない峰らるのヴォーカリゼーションの不可思議さ。重力や抑揚からするりと抜け出しつつも、“無機質”とは言い難く、“浮遊感”“透明感”といった文言で切り抜くのは憚られる軽妙さが音のピースとしてぴたりとはまる快感が素晴らしいのです。なお、Frascoは『Theatre / Theatre(Sunaga t experience remix)』で参加します。

■「ジャズ・ア・ゴーゴー」(’64) /フランス・ギャル

今年1月に亡くなったフランス・ギャルは「ジャズ・ア・ゴーゴー c/w ジャズる心」「ダディ・ダ・ダ c/w 時、テンポ」「太陽をあげよう c/w 恋のためいき」の3タイトルで参加。まだ日本に“アイドル”という概念のなかった頃に燦然と現れ、少女の刹那的な輝度と酷薄な運命を体現し、またひとりのシンガーであったフランス・ギャル。「ジャズ・ア・ゴーゴー」は狂騒を絵に描いたようなフランス・ギャルのスキャットと、グルービーに跳ね回るウッドベース、歌声と呼応し、ダンスを踊るように雪崩込むシンセサイザーとトランペット、スカスカに乾いたドラムで構築される2分間足らずのジャズナンバーで、クールでダークネスなショーに迷い込む気分が味わえます。

■「不通」(’16) /Moe and ghosts×空間現代

京都を拠点に活動する3ピースバンド空間現代は、坂本龍一との共演作 「ZURERU」で参加。今回はフィメールラッパーMoe and ghostsとのコラボレーションアルバム『RAP PHENOMENON』から、収録曲「不通」をピックアップします。過剰な言葉の星空から意味だけ幽体離脱させたようなMoe and ghostsのフロウ、乱反射する巧緻な変拍子のリズムで目まぐるしくも淡々と絡み合う楽曲は、どこに不時着するか分からない人力ポルターガイストと言った風情です。ギリギリまで肉や脂肪を削ぎ落とされたストイックさで武装したフィジカルと、縦横無尽に動き回るピンボールを思わせる天衣無縫さが交錯するタッグ、今一度ライヴでも拝みたいものです。

TEXT:町田ノイズ

町田ノイズ プロフィール:VV magazine、ねとらぼ、M-ON!MUSIC、T-SITE等に寄稿し、東高円寺U.F.O.CLUB、新宿LOFT、下北沢THREE等に通い、末廣亭の桟敷席でおにぎりを頬張り、ホラー漫画と「パタリロ!」を読む。サイケデリックロック、ノーウェーブが好き。

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